乃木双葉は勇者であるｰｰ鷲尾須美の章･弐ｰｰ (ページ8)

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2話ページ8

須美side

＿in神樹館

明かりがなく薄暗いこの教室には啜り泣く声が響いていた

安芸「三ノ輪銀さんは神樹様のお役目の最中に亡くなりました。お友達とお別れするのは辛いことですが、どうか誇らしい気持ちでお見送りしましょう」

銀の机の上には桃色の綺麗な花束だけが置いてあるが、当の本人はそこに居ない

その事が真実を物語っていた

安芸「明日告別式が行われます。授業をお休みして皆で参加します」

俯きながら隣に座っているそのっちに目を向ける

そのっちも悔しそうに唇を噛み、涙を堪えていた

外は雨足が段々と強くなっており、地面を叩き付ける雨音がやけに煩く耳に残った

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＿in告別式

葬儀が行われる今日の天気も生前の銀とは対象的な雨の日だった

「本日此処に、哀悼の意を捧げます。今私共は深い悲しみの内に、勇者様に御別れを告げようとしております

三ノ輪銀様は天性の才能、剛毅不屈の精神、それに、人間味豊かな性格を持って神樹様の重大な任務に務められていました

その輝かしい偉業は永久に我々の指針として残る事でしょう。どうか神樹様の元で安らかに、そして、末永く私共の行く手を御見守り下さい」

啜り泣く声が会場に木霊する中、壇上から座席を見下ろす

神樹館の制服に身を包んだ大勢の男女の姿が目に写る

そう言えば、正装に着付けて貰っている時園子が｢クラスの皆もミノさんの告別式に来るんよね～｣って言ってたっけ…

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＿in待機所

銀の御両親と弟君達の様子が気になり、"三ノ輪家"と書かれた大部屋の前まで来ていた

男女問わず沢山の人が集まっており当然ながら、全員黒い正装をしている

扉の近くまで来ると、部屋の中から微かに声が聞こえてくる

「この度は＿」

「まだ、小さいのにとても残念な事です」

「銀ちゃん、御勤めなさっていたんですね」

「我々市井(しせい)の者には見当もつきませんが、大変だったんでしょうね」

「神樹様のお役目で逝かれるとは、大変名誉な事じゃないか」

「そうは言ってもね～、家の子がもしそうだったらと思うと…」

「銀ちゃん、良く頑張ったわねぇ」

「銀ちゃんはね、英霊になられたの。羨ましいわ」

「今後三ノ輪家の者は莫大な援助を得られるんだ。寧ろ銀も奉公が出来て誇らしい事だろうよ」

声を掛けれた弟君も銀の御両親も虚ろな目をしていて、何も映していないように見えた

大人達は何も分かっていない