１３話 帝督Side ページ18
「オラ、もうそろそろ吐いたらどうだ？」
「う”っ...知らないんだ！本当だ！」
「そうか、じゃあもういい」
「助け...」
ぐちゃっという音を立て、さっきまで人間だった白衣の男を見下ろす。
ここもダメか、とため息を漏らす。いつからだったか、俺は俺のそばにいると約束した大切な女を探し始めた。
黒髪で黒い瞳をした女の子で笑顔がとても愛おしかったのを覚えている。彼女と過ごした日々は本当に幸せだった。
彼女といる時間は実験という苦痛を強いられる中で唯一心が休めることができる時間だった。
だが、そんな彼女は約9年前に俺の前から姿を消した____
なんでいなくなったのか研究者を半殺しにして聞いたがどこかの研究所に連れて行かれたというだけで理由まではわからなかった。
それに俺は彼女の能力を知らない
だが、俺の未元物質を逆算してなんとかしようとしていたことは覚えている。だから、おそらく分子系の能力者。
水とか風を操る的なものだと予想を立て俺は今、その能力者が研究対象となっている研究所を１から探しているが一行に見つからねぇ
結構な研究所を回ってきたが、尻尾すら出さねぇ
手がかりは大体の能力と容姿、そして名前
苗字はしらねぇが名前がAだってことはわかってる。
こういう時、柄にもなく愛の力とかなんかで、すぐに会えたらいいのにとか思ってしまう。
「垣根さん、見つかりましたか？」
「見つかんねぇよ。ったく、俺のお姫様はどこ行ったんだぁ？」
「あなたにしては随分熱心ね」
しかもお姫様だなんてっと少し笑いながらこちらに近づいてくるのは、俺の組織の仲間である心理定規と誉望万化、弓箭猟虎。
こいつらには手助けはいらねぇと言ってあるが、俺が探し始めて３ヶ月経ったくらいから勝手に手を出してきやがった。まあ俺が一人で少し難航してたとこだったからよかったが....
まあ、どう考えても心理定規は楽しんでるな。
「それにしてもこんなにも探してるのに、全く手がかり無しって....もしかしたら研究対象に選ばれてないんじゃないっすか？」
「いや、それはねぇな。俺のお姫様は他の研究所に回された所を見れば、研究材料としてほしい存在だった可能性の方が高い」
「でも連れて行った人が嘘をついていたら？」
心理定規は指を顎に当て俺の方を見る。
多分こいつは俺にAはもうこの世にいない可能性の方が高いって言いてぇんだな？
「というかその人まだ生きてるんですか？」
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作者名：あすな | 作成日時：2020年8月9日 1時
