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「……あ」
デパートの地下、食品コーナー。
そこで目にした二人組を前に慌てて柱の陰に隠れた。
チラリと視線を投げるとその二人組──Aとあろまはこちらには気づいていないようで、ディスプレイの前でなにやら楽しげに話している。
喧騒を浴びたデパートの中では当然話している内容など聞こえない。
それでもこの時期にこの二人がこんなところで一緒にいるとなると、目的は絞られてくる。
多分、いやほぼ確実に、100%と言ってもいいぐらいの確信を持って言える。
俺の誕生日に向けた何かを用意しにきてくれているのだろう。
それがAからのものなのか、あろまからのものなのか、はたまた両方なのかはわからない。
あのあろまが素直に俺に向けて何かを準備してくれるところも想像つかないから、Aがあろまに一緒に探すことを頼んだのだらうか。
……というか、Aってあろまの連絡先知ってたっけ?
会わせたことはあるけど連絡先の交換はしていた記憶はないし、内心思ってるどころか堂々と「あいつら嫌い」なんて言い張るAがあろまと自主的に会うだなんてことはちょっと予想外だった。
まぁAがあいつらを嫌ってるのは、俺のことが好きすぎるあまりだけど。
自分の好きと嫌いを天秤にかけて俺を選んでくれたであろうAのことを考えると、口がニンマリとしてしまう。
おっといけない、バレないうちにここを立ち去らなければ。
せっかく慣れないことをして頑張ってくれてるAの心遣いを無碍にしないためにも、あろまと二人でいるところを俺が見ただなんて気づかれてはいけないのだ。
そそくさとその場を後にし、予定を繰り上げて家路へと就く。
なんとなく気分がいいから今夜はAが気に入った料理でも作ってやろうかな。
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作者名:せとか | 作成日時:2021年5月6日 22時