色恋戦線 2nd【ars K.N】 (ページ14)

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「先生は、...先生だけど、もう私は生徒じゃないし...」

それでもキミは、続ける。
真っ直ぐに、想いをぶつけて来る。

「邪魔したくないんだよ」
「......え？」
「オレはね、お前の邪魔をしたくないって思ったの」
「邪魔なんて...そんなの、全然されてないし...」
「もっと周りを見ろって言ったでしょ？お前の世界が、狭くなってんじゃないかなって思った。オレのせいでね」

例えばもっと恋愛経験のある子なら、気にならなかったのかもしんない。
例えばもっとズル賢い子なら、まぁいっかって思えたのかもしんない。

でもそうじゃないから。
だけどそうじゃないから、オレは...惹かれてしまったんだ。
何だろう、これ。どんな矛盾で面倒臭い事案なの。

「...確かに私の世界は狭いのかもしれないです」
「......」
「だけど、それは私が望んで作った世界です」

キミの目に嘘は無くて

高校の時のあの告白より、もっと想いは強くて

なんて熱烈な告白してんのよ、と泣きそうで笑いそうで、息を吐く。
白い靄が、ふわりと揺れた。

「だから...だから、先生。私に会いたくないなんて、言わないで下さい...」

キミが俯く。
噛んだ唇が、痛そうだった。
握った拳が、痛そうだった。

「......お前は、残酷だね」

残酷なのは、オレの方。

ソっとキミの頭に掌を乗せる。

「これ以上、オレを困らせないでよ...」

自分で勝手に困ってるくせに、キミのせいにするオレを許してとは言わないから。

キミの頭をするりと撫でる。
するり、するりと。

掌から、本音がキミの中に流れてってしまうんじゃないかって思った。

「...オレがどんな想いで......」
「先生...？」
「お前は聞き分けの良い子だと思ってた」
「......」
「でも、『聞き分けの良い子』なんて本当は居ないんだよな」
「......」
「聞き分けが良いんじゃない。『我慢強い子』ってだけだ」

手から力が抜けて、キミの頭から掌がストンと落ちた。

「お前は我慢強かったね」
「...何で過去形なんですか...」
「だって、今のお前は我慢してるように見えない」

もう意志を曲げる気も無い様子の目が、オレを見る。

「オレはね...お前と居ると、自分を制御できなくなりそうなんだ」

自分が何をしてしまうか分からない。

このまんまだと、間違い無くオレは何も知らないキミを汚してしまう。
何も知らないまんまのキミを、オレが染めてしまう。

それでも良いって、キミは思う？
それでも良いって、キミは言う？