色恋戦線【ars K.N】 (ページ34)

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キミはふらふらと不安定な足取り。

大通りに出た時「しゃがんでても良いよ」と声をかけると、不思議そうに見上げて来る。

「タクシー拾うわ」
「タクシー...って...」
「一人じゃ帰らせらんないだろ。こんなフラフラの女の子」

一人じゃ帰らせらんないでしょ。
こんな危なっかしい女の子。

ポンポン、と頭を撫でるとキミはその場にしゃがみ込んだ。

自分が酔ってるって事、認めたんだな。

「酔っ払いがー」

何か、こういう空気が懐かしくって

どこか、むず痒い感じがした。

目の前を何台かタクシーは通り過ぎるけど、なかなか空車が無い。

早く家に帰してやりたいと思うけど、もう少しこんな時間が続けば良いとも思う。

その時

キミの手が、オレの手に触れた。

「...どした？」
「......」

触れた手を、ギュっと握る。

「子供だな」

そうでも言ってないと、平静を保てなかった。

「すげぇお前の手、熱いけど」
「......」
「眠いんだろ」
「...眠くない...」

もしかすると、キミはまだ...？

お互いの気持ちが分からなくて、でも相手からの嫌悪は感じなくて

むしろ、好意を感じる瞬間が男女の間にはある。

この瞬間は、まさにソレで。

空車のタクシーがあと3台待っても来なかったら、もうこのまんまオレんちまで連れて帰ってやろうか...なんて思ってしまったりして。

でもそんなオレの考えは許されなかったらしく、3台目のタクシーを見送った直後に空車のタクシーが止まった。

何かもう、ごめんなさい。
心の中で誰にだか分かんないけど、とりあえず謝った。

タクシーの中では必死で眠気と戦ってるキミの隣で、ある匂いに気付いた。
その匂いの元が入ってるであろう紙袋に鼻を近付けてみる。

これって...

ウトウトしてるキミを見ると、首を傾げた。

「...え、何ですか...？」
「うん、ちょっとね」
「......何...？」
「いや、うん。ちょっと、ごめんな？」

キミに身体を近付ける。

花に誘われる蝶は、こんな気持ち？

「あぁ、やっぱコレお前の匂いか」
「...に...おい...？」
「柔軟剤？」
「...え？え、...え？」
「シャツ、洗濯してくれたんだな」

シャツを紙袋から取り出し、そこに顔を埋める。

「お前と同じ匂いになってる」

キミを、抱き締めてるような錯覚。

でもすぐ変態っぽい事に気付いて、笑って誤魔化した。

ペースが乱れる。

恋をした相手は、10個も年下。

どうやって向き合えば良いのか

ちょっとまだ、分からない。