【Kz】君の名前を呼ぶよ．．．

story14 ページ20

帰ろうとした瞬間、奥のドアから音が聞こえた。

『ガチャ』

怖くなって動けず、立ちすくんでいた。


だ、誰だろ…

走っている足音がする。


？「アーヤ！！」

あ、れ？

この声って…

彩「た、すく？」

前にはバスケ部のユニフォームを着て息を乱している翼がいた。

美「良かった。まだ帰ってなかった。」

そう言うと翼はニコッと微笑んだ。

その微笑みはもんもん悩んで苦しくなっていた私の心に
すうっと染みこんできた。

彩「は、話ってなぁに？」

寒さもあり、体と声はカタカタと震えていた。

翼はユニフォームの上に羽織っていたカーディガンを
私に掛けてくれた。

美「待たせてたよね。ごめん．．．今日はさ、
昼間の事もあったから大丈夫かな、と思って。
アーヤの精神的にも。」

心配してくれたんだな．．．

彩「私は大丈夫！むしろ翼こそ走ってきてくれたよね、大丈夫？」

私が聞くと翼はん、とうなづいた。

美「アーヤさ、今悩んでたでしょ。」

バレてる．．．

彩「うん、ちょっとね．．．
自分が何もしていなくても相手は印象を決め付けちゃうんだよね。
南さんの中の私のイメージってなんだろう．．．？」

翼に嫌われたかも．．．と悩んでいたことはなんとなく恥ずかしいから
言わなかった。

でも、本気で考えていたんだ。
南さんの中の私のイメージはただの決めつけであって
本当の私じゃない。
それなのにそのイメージと重ねて接するんだ。

彩「翼は、自分が勝手な相手のイメージで誤解されたり、
自分を決めつけられても平気？」

翼はしばらくの間考えてやがて顔を上げ、私の顔を真っ直ぐに見つめた。

美「アーヤ、これから大事な話をするよ。
今後、アーヤが同じ事で悩んで苦しまない様に。」

何時になく真剣な表情に私は心を打たれた。

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