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第四話「記憶喪失?」 ページ4

『済みません、判りません……』




視線が痛くて思わず俯く。

何を聞かれたって私は判らない。




「……昨日のことは覚えているかい」



『昨日?』




昨日は……学校に行って普通に授業を受けた。

友達とはしゃいでお喋りした。

夕方にはバイトをした。

高校はバイト禁止だが、大学の学費の為に密かにしていた。

それから家族とご飯を食べてコンビニにプリンを買いに行こうとして

トラックに轢かれた



たったそれだけ……




『……っ』




家族や友達、バイト先の先輩の顔を思い出して思わず目尻が熱くなる。




「昨晩の任務は?」



『……任務?』



「……ふむ、記憶喪失か」




任務ってあれ?水の中にいたの?

あれって任務だったの?


私が不思議そうに首を傾げているのを見て森さんは昨晩の事を教えてくれた。




「昨晩、君の任務は敵組織の壊滅の為に数名の黒服と共にとあるビルに行った。
しかし予想を超える敵の人数に苦戦した。君は腕と頭を負傷しさらに爆発に巻き込まれ、川に落ちた」




あまりの壮大さに私は血の気が引く。

私……よく死ななかったな。




「そのショックで記憶が曖昧な可能性があるね。私の名前はわかるかい?」



『……森……鴎外さん』



「正解、では彼は?」




森さんは太宰を指さしてニコリと笑う。




『……太宰……治さん』



「ふむ、私達の名前は覚えているのに自分の名前は覚えていないのか」



『は、はい……』




ちょっと違うが取り敢えず頷く。


私は彼らを覚えているんじゃない、知っているのだ。

だってかの有名な文豪ストレイドッグスのキャラクターなのだから。

私が愛読していた漫画のひとつなのだから。




『……わ、私は如何すれば……』




チラリと森さんを縋るような目で見る。

一瞬、聞く相手を間違えたと思ったが私を知っている人物に聞いた方がいいだろう。




「……そうだねぇ」




チラリと太宰の方を向いた。

太宰の顔が曇る。




「先ずは君の異能が何なのかを解明しようか」




ニコリと私の視線に合わせて笑い掛けてきて何故か冷や汗が流れた。




『……異能』



「異能の存在は覚えているかい?」



『は、はい……辛うじて』



「……そうか、では君の異能の事だが」




森さんはもう一度、太宰を見て云った。




「太宰君、君に任せる」



「えぇ……」




厭そうな顔をして私を見る。

そんな露骨に不満を漏らさないでくれ。


.

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作者名:らしろ | 作成日時:2020年7月20日 0時

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