第六十六話【湯豆腐】 ページ20
探偵社に来て医務室へ這入る｡
そこにはベッドに寝ている敦君と鏡花ちゃんがいた｡
『……敦君と鏡花ちゃんの容態は？』
｢気を失ってるだけだよ､命に別状はない｣
晶ちゃんはホッとした顔つきで二人を見る｡
私は鏡花ちゃんに近付いて頭を撫でる｡
『なら良かった､じゃあ鏡花ちゃんは連れて帰るね』
｢A｣
鏡花ちゃんを背負って晶ちゃんの方を振り返る｡
晶ちゃんはじっと私の目を見つめる｡
｢……今回のこと｡若しかして知っていたのかい｣
私はニンマリと笑って敦君を見る｡
『うん､敦君が勝つって知ってたよ』
それじゃ〜と云って外へ出る｡
日が沈みかけ､辺りが薄暗くなる｡
『……私も動き出さないとね』
ゆっくりと着実に進む時｡
もう迷わないし､信じるだけ｡
『……“ヨコハマ､本､異能､約束”』
ふわりと灰色の髪が揺れる｡
『“誰もいない､何もない､すべて消える､ぜんぶ変わる”』
喩え､全てがこの手から零れ落ちようと必ずまた掬ってみせる｡
『……ふふっ､今日のご飯は何にしようかなぁ』
先程とは打って変わって穏やかな雰囲気で晩御飯の献立を考え始めたのだった｡
━━━━━━━
━━━
━
『美味しい？』
｢……美味しい｣
『うふ』
結局は湯豆腐にした｡
彼女は豆腐が好きなことを思い出したのだ｡
『喜んでもらえて善かった』
デザァトのプリンを出すと鏡花ちゃんの目がまた一段と輝く｡
こんなに黙々と嬉しそうに食べる姿を見ると作ったかいがあるもんだ｡
『鏡花ちゃん､明日は探偵社に来ない？』
私の言葉に鏡花ちゃんの手が止まる｡
そして俯いて悲しそうな顔をする｡
｢……私が行っていいの？｣
『勿論､鏡花ちゃんが来ればきっとみんな喜ぶ』
その言葉にまだ半信半疑な彼女に私は微笑む｡
『大丈夫､私がいる｡それに敦君もいるから』
“敦君”という言葉で彼女がほんの少し反応した｡
そしてちょっとだけ笑った｡
『お風呂入って寝ようか』
食べ終わった食器を流し台に入れると鏡花ちゃんはピッタリと私にくっつく｡
それが可愛くて頭を撫でる｡
『先にお風呂に入っておいで』
｢……うん｣
風呂場を案内して私は片付けをする｡
明日､鏡花ちゃんを連れて探偵社に行って｡
皆とお菓子食べてゲェムして｡
それから……
また明日も楽しそうだなと自然と笑みが零れたのだった｡
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 139人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
