第百十九話『私ニ気付イテクレタ』 ページ8
ヒールを鳴らしと何人もの黒服の間をすり抜け長い廊下を歩く
今のところこの一階フロアに奥までは探偵社は来ていない
樋「……芥川先輩は一体何処に」
不審な者はいないか巡回していると同時に上司を探すが、一向に見つからない
通信機はあるが、繋がらないのだ
樋「……ん?」
何かがポツンと廊下に置かれている
兎の人形だ。一体何故ここにこんなものが───
樋「────!」
人形に気を取られた一瞬、何かが自分の口を塞ぎ、後ろへ引っ張られた
そのまま一室に引き摺り込まれると首元に冷たいものがあたる
鏡「動けば斬る」
あまりに冷たい声と目に樋口は顔を顰める
鏡「地下三階。首領が眠る避難室の解除番号を教えて」
樋「……探偵社に入り暗殺を止めたと聞きましたが、誤情報のようですね。少なくとも暗殺を止めた様子はないですから」
彼女は鏡花の問いには答えず、挑発した態度で口角を上げる。余裕そうに振舞っていても樋口の手は震えていた
鏡「無益な殺しはしない。それは彼の人と同じ。でも情報を吐かないなら、銃を撃てない腕になって貰う」
樋口は息を呑む
腕が遣えなくなったら芥川を護れないどころか、足枷になってしまう。彼女は優しい。きっと後悔し、こんな自分の為にも泣いてくれるだろう
鏡「如何したの」
樋「……いえ、先輩の顔を思い出したらなんだか元気が湧いてきました」
鏡「……変な人」
樋「銃を撃てなくなるのは構いません。ですが、この腕は銃を撃つ為にある訳では無いんです」
希望と決意の篭もった瞳が鏡花に向けられる
樋口のことをあまり知らない鏡花でも“彼女の中で何かが変わった”と気付いた
樋「この仕事に就いた時から覚悟は出来ています。しかし、私は約束したんです。尊敬し、憧れてやまない上司と……」
────私が先輩のお傍に居る以上、最悪の事態には致しません。必ず
だからこそ諦めてはいけない。相手の思い通りにはさせたくない……
しかし今のこの状況はどう見ても樋口が劣勢だ
────それでも力及ばぬ時は、僕を呼べ。大声で、遠くにいる僕にも聞こえるよう、声を張り上げろ
樋「……だから私は彼の人に一生ついて行くと決めたんです。こんな取り柄も、才能も無い私に気付いてくれた、女神様に────」
すぅとゆっくりと大量の空気を吸い、あらん限りの声で叫んだ
樋「芥川せんぱぁぁぁあああいいいいぃぃぃぃ!!!」
.
第百二十話『初メテデキタ大切ナ人達』→←第百十八話『渡シテ欲シカッタ』
1178人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らしろ(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» コメントありがとうございます。やっと続編に続きます。明日には5を公開できると思いますのでお待ちください!ご愛読ありがとうございます。 (2020年3月15日 13時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 頑張ってください〜待ってますのでー! (2020年3月15日 3時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます。時間に余裕ができれば黒の時代もやりたいなと思っています。ご愛読ありがとうございます! (2019年7月1日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - いつか黒の時代も見たいです…… (2019年6月30日 22時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださると嬉しいです。頑張ります! (2019年6月22日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月22日 17時