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第百五十話『考エルヨリ先ニ』 ページ39

『済まん、立原』



立「うぅ、まさか芥川の兄貴でも解けない謎だとは……」




本部に戻った芥川は執務室で作業をしていた立原の元を訪れた
項垂れながら本を受け取る立原に少し申し訳なくなった




『(本当は全てわかってるのに)』




云ってはいけない。否、云いたくない。
小栗虫太郎の顔が浮かんできて顔が歪む芥川。




立「……兄貴?」



『……それは、自身の力で解いた方がいい』




立原の頭を撫でて足を動かす。
樋口に連絡を取ろうと携帯を出した時だ。




立「あ、兄貴!」



『……ん?』




呼び止められて少し驚きながらも振り返る
立原は何かに迷っている表情を見せるが、すぐに笑った




立「……何でもないです!じゃ俺は仕事に」



『立原、今日の夜は空いているか』



立「……えっ」




目を丸くする立原に芥川は自分の発言に少し考えてから、はっと気付く




『きょ、今日の夜は僕は任務がある!だっだからその任務に同行してもらえないか!?』



立「えっあっ……はい!わっ判りました!」



『頼むぞ、では二十一時にロビーに来い』



立「はっ、はい!」




言葉足らずはいつかはあらぬ誤解を生むことがある
いくら上司とはいえ、夜は空いているかと云うと、部下は様々な妄想をするだろう……といつの日か太宰が云っていた




『……くっ、太宰さんの言葉が今になって身に染みて判るとは』




悔しいような、しかしそのお蔭で助かったから感謝しなくてはならない
不機嫌になりながらも樋口に連絡して廊下を歩く




『……しかし何故、僕はあんな事を云ったのだろうか』




自分で云ったのにその真意が解らないなど人々の上に立つ者として失格だ。




『……考えるより先に言葉が出るとはな』




後悔はしていない。任務に誘えてよかった。
そう思いながら自分の執務室の扉を開けた。





***





立「……やっちまった」




立原はくしゃりと資料を握り締めて項垂れる
それはもうこの世の終わりだという程に。




立「今日の夜はあっちの集まりがある。しかも……この前もあったのに俺は兄貴を優先してしまったから今日は絶対に行かないと……」




ブツブツと云って頭を抱える。
とある幼女の顔が浮かんで背筋がぞくりとした。




立「……今更、兄貴に行けないって云うのも」




何か訳があって立原を誘ってくれたのだろう、その気遣いを無駄にしたくない。
溜息を吐いて携帯を取りだした


.

第百五十一話『目ノ下ノ隈ハ何デスカ!』→←第百四十九話『アタタカイ人』



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らしろ(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» コメントありがとうございます。やっと続編に続きます。明日には5を公開できると思いますのでお待ちください!ご愛読ありがとうございます。 (2020年3月15日 13時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 頑張ってください〜待ってますのでー! (2020年3月15日 3時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます。時間に余裕ができれば黒の時代もやりたいなと思っています。ご愛読ありがとうございます! (2019年7月1日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - いつか黒の時代も見たいです…… (2019年6月30日 22時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださると嬉しいです。頑張ります! (2019年6月22日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月22日 17時

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