漆黒の狗は原作を知らない為困っているそうです4【文スト】【芥川成り代わり】

第百四十一話『オ前ニ似テルナ』 ページ30

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『……じゃあ､また来る』




ふわりと白い外套が揺れる
久しぶりに織田作の墓の前で手を合わせた芥川




『……どうか､この街を､皆を……見守っ』



敦｢……芥川？｣




ハッと後ろを振り返る
敦が不思議そうにこちろを見ていた




『なぜ貴様がここに』



敦｢太宰さんがまた行方不明だから探しに来たんだよ｣



『……ここには居ない』



敦｢……そっか｣




すると敦は芥川の横へ来て墓に手を合わせる
一体､こいつは誰の墓だと思って手を合わせているのだろうか




敦｢前に太宰さんもこのお墓に来てたんだ｣



『……そうなのか』



敦｢芥川にとっても大切な人なのか？｣



『……あぁ』



敦｢どんな人だった？｣




それはもう､お人好しだった｡弱き者に手を差し伸べ､少し天然で頼りないようでいて､ここぞという時に強く､そして何より優しい……




『……お前に似てるな』



敦｢……僕に？｣



『彼の人もお人好しだった』




背を向けて歩き出す
あぁ､そういえばもう一つあった




『その人は､マフィアにも関わらず……人を殺さなかった』



｢……へっ｣




予想外だったのか､驚いた様子の敦
マフィアに居るからといって誰もが人を殺したりなどしない｡しかしそういう奴は早々に潰れてしまう




敦｢そう､か…………芥川､賭けをしないか｣




不意の言葉に芥川は振り返る
敦は真面目な顔で彼女をじっと見つめていた




敦｢……半年｣



『……半年？』



敦｢……半年の間､お前は人を殺すな｣




思わぬ言葉に芥川は言葉を失う
マフィアで人を殺さぬことは自分の頸を絞めるようなもの




『……僕になんのメリットがある？』



敦｢うっ､それは……｣



『……ならばこうしよう』




半年の間､誰も殺せない
しかし半年経てばいいのだ｡そのあかつきには……




『半年後に貴様を殺す』



敦｢……っ｣



『それまで身体を鍛えるなり､半年という余生を楽しむなり好きにしろ｡ただし……』




近付いて胸ぐらを掴み､敦を睨む
殺気を剥き出しにして一般人なら容易く倒れてしまうくらいに




『……それまで誰にも殺されるな､絶対にだ｡いいな？』



敦｢……判った｣




彼の強い瞳が芥川を捉える
こんな口約束をしてしまったからにはしっかりと実行しなければならない




敦｢じゃあまたな｣



『あぁ』




そのあと一言も話さずに別れた
彼等の背中を押すように風が吹いた


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