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第××話『台本通リノ世界ヲ“壱” 』 ページ48

「……ん」




目を覚まして体を起こし、辺りを見渡す。
くるりと頭を動かし、地下室のようなひんやりとした部屋に身震いをする。




「おはようございます」




不意に扉が開いて男が顔を覗かせこちらを見た。
彼を見た瞬間、芥川は超絶に嫌な顔をした。




「何ですその顔」



「……頸を斬られるのと心臓を突き刺されるのは何方が好みだ?」



「……どちらも好みません」




男───フョードル・ドストエフスキーは芥川の前まで来てしゃがむ。
芥川は後ずさるも真後ろに壁がある為、身動きが取れない状態。




「……貴様の目的は?」



「まだ判りませんか」



「……判らんから聞いているんだろう」




フョードルは微笑んで人差し指を芥川の腹に向ける。
ヒヤリと背筋が凍って息を止めた。




「……貴女の為です」



「……なんだっ……て?」




貴女の為?意味が解らん。
ならば異能を掛けてほしくない。




「……や、僕は、こんなの……望んでなど」



「しかし心のどこかでは思っていたでしょう?こんな運命を背負いたくない、と」



「……そんなの誰しも一度は思うことだ」



「果たして本当にそうでしょうか?だって貴女は……」




フョードルは続きを云おうとしてやめた。
芥川の顔がとても怯えていたのだ。




「貴女は、ぼくの目的を覚えているでしょう」




眉を顰める芥川にフョードルは少しずつ顔を近づける
先程から距離が近くなるにつれて芥川の体は縮こまっていく。




「……白紙の本を入手し、異能の無い世界を創る」



「……ええ。一つ伺っても?」



「……何だ」



「貴女の目的(・・)は何ですか?」



「……前にも云ったが、いつかこの世界に本当の幸福が来る日までこの街を、護るべきモノを守ること……」



「……それは使命でしょう?目的を聞いているんです」




フョードルの鋭い目が芥川を捉える。
彼女はそれに臆することなく微かに口角を上げる。




「……使命と目的は同じだろう?」



「そうでもありませんよ。では質問を変えましょう。その使命を果たす事は、貴女にとってどんなメリットがあるんですか」



「……僕をここまで強くしてくれた人や支えてくれた人の為の恩返しを……」



「そろそろ本性を見せてくれませんか?ぼくだってあまり時間が無いんです」



「……ははっ、時間が無い?貴様の都合を僕に押し付けるな」




劣勢の芥川の瞳がぎらりと光った。


.

第××話『台本通リノ世界ヲ“弐” 』→←第百五十八話『ギムレット』



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らしろ(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» コメントありがとうございます。やっと続編に続きます。明日には5を公開できると思いますのでお待ちください!ご愛読ありがとうございます。 (2020年3月15日 13時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 頑張ってください〜待ってますのでー! (2020年3月15日 3時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます。時間に余裕ができれば黒の時代もやりたいなと思っています。ご愛読ありがとうございます! (2019年7月1日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - いつか黒の時代も見たいです…… (2019年6月30日 22時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださると嬉しいです。頑張ります! (2019年6月22日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月22日 17時

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