第百十六話『心ノ支エハ』 ページ5
ポートマフィア本部、執務室へ到着した
樋口は中也の命令を嬉しそうに遂行し、芥川は長い溜息を吐く
『樋口、先に云っておく』
樋「何でしょう?」
携帯でメールを打ちながら樋口をちらりと見る
相変わらず緊張感のない顔をしているお気楽な少女だ
『若しかしたら死の家の鼠の構成員や探偵社が不意をついて襲ってくるかもしれん。故に常に警戒し、襲撃あれば銃を抜き、返り討ちにしろ』
芥川の真剣な表情に樋口は顔を強ばらせる
純粋に芥川を慕ってくれる無垢な彼女をどうしても死なせたくない
『それでも力及ばぬ時は、僕を呼べ。大声で、遠くにいる僕にも聞こえるよう、声を張り上げろ』
樋「……っ」
『いいな?これは命令でも規則でもない。唯、弱者からの……惨めな約束事だ』
何かあれば助けを求めて欲しい
何かあれば僕の名を呼んで欲しい
……嘗て、芥川が彼に云えなかった言葉だ
『もうこれ以上、大切な人は失いたくない……』
樋「……先輩」
樋口は目の前にいる上司の顔を改めてじっと見つめる
光のないどこまでも闇の続く漆黒の瞳
でも樋口は知っている。そのもっとずっと奥に大切な人を守ろうと自分を犠牲にし、弱者に手を伸ばす優しく温かい光があることを
樋「……判りました。必ず、先輩を呼びます」
芥川が樋口を見つけ、自分の生きる意味を見つけてくれたように
今度は……
樋「私が先輩のお傍に居る以上、最悪の事態には致しません。必ず」
『……ありがとう、樋口』
彼女の心の支えになるのなら私はいつだって芥川先輩の傍を離れないし、絶対に約束事を守る
────改めて心に誓い、頬を緩ませた樋口だった
.
────ピロリンッ
その音を聞き、瞬時に携帯を見る芥川
一通のメールがきていた。差出人は……中島敦
“中島敦です。よろしくお願いします。”
『んあ?……何だ此奴』
思わず間抜けな声が出てしまった
樋口は珈琲を淹れながら如何したのかと聞いてきた
『否、何でもない。迷惑メールだ』
樋「ならば私が徹底的に調べ上げて送り主を排除しましょうか」
『……ん?えっ、いや問題ない。大丈夫だ』
真顔で物凄いことを云う樋口に芥川は一瞬、言葉の意味を考え返事をした
樋口を宥めて敦へ返信する
“堅苦しい文で腹が立つ”
この文を見た彼奴はきっと慌てるだろうなと口角を上げた芥川であった
.
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らしろ(プロフ) - 乳酸菌 チーズさん» コメントありがとうございます。やっと続編に続きます。明日には5を公開できると思いますのでお待ちください!ご愛読ありがとうございます。 (2020年3月15日 13時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
乳酸菌 チーズ(プロフ) - 頑張ってください〜待ってますのでー! (2020年3月15日 3時) (レス) id: df6c59ac1d (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - ぴのさん» コメントありがとうございます。時間に余裕ができれば黒の時代もやりたいなと思っています。ご愛読ありがとうございます! (2019年7月1日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - いつか黒の時代も見たいです…… (2019年6月30日 22時) (レス) id: 5f84d6c253 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます。楽しみにしてくださると嬉しいです。頑張ります! (2019年6月22日 22時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月22日 17時