漆黒の狗は原作を知らない為困っているそうです3【文スト】【芥川成り代わり】

第八十四話『ソレガ真実』 ページ4

『その男も孤児院の出だった
奴はそこで地獄のような経験をした｡お前以上にな』




両掌を鉄床に付けて空を見上げる


此処は探偵社の非常階段
中身を見るのが怖いから一緒に見てくれと子どものようなお願いをされ隣に居る




『……それが真実だ｡ところでこの羽織り､どこかで見たことあるような気がするが？』



敦｢……ッ､信じられない｣



『無視か』




真逆､探偵社まで引っ張られるとは思わなかったので変装道具はない




『暑い……』




と､いう事で黒い羽織りを頭から被っている｡お蔭で全身真っ黒くろすけだ
しかしこの羽織り､福沢殿が持っていた物と酷似しているような……




敦｢芥川｣



『……何だ？』



敦｢僕は今､生きている｣



『ああ､僕の隣で顔を真っ青にして息をしているぞ』



敦｢じゃあ､あれは……｣



『敦､一応云っておく｡決して自分を憎むなよ』



敦｢ッ！……え｣




ポカンと間抜けな顔で芥川を見る
彼女は済ました顔で空を見上げていた




谷｢院の職員さんから裏が取れたよ｡院長先生が横浜に来た理由が判ッたよ｣




谷崎が神妙な面持ちで歩いて来た
彼の話によると､院長は敦の活躍を新聞記事で知り､会いに来ようとしていたらしい




『成程｡矢張り激励を……』



敦｢嘘だ！｣




資料を地面に叩き付けばら撒き､否定の言葉を零して階段を駆け下りて行った




『おい､敦！』



谷｢敦君！！｣




二人で呼び掛けるが姿が見えなくなった




谷｢……善いンですか？このままで｣



太｢ああ｡敦君には必要な混乱だよ｡ねっ､Aちゃん｣



谷｢A……ちゃん？｣




谷崎が近付いて顔を覗き込もうとする
急いで羽織りで隠すが､格好で判ったのだろう｡芥川！？と叫びそうになった彼の鳩尾に拳を入れた




『す､済まん！不可抗力ってやつだ！』



谷｢い､いや……大丈……夫｡慣れ､てる……から｣




片膝をついてお腹を押さえる谷崎がとても不憫だ
しかし､慣れてるとは……あの飛び付き妹がいるからであろう




太｢敦君が君を此処まで連れて来るとはね｡意外と好かれてるねぇ｣



『……好かれたら困る』



谷｢……此処は､芥川ちゃんが敦君の処に行った方がいいかと｣



『断る｡絶対に厭だ』



太｢谷崎君､好い考えだね！敦君は意外と芥川君のこと慕っているしね！｣



『……どこが！？』




二人に行けと云われ､脅す言葉も掛けられ仕方なく敦の捜索にあたった


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