漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百六十六話『後悔ノ波』 ページ9

太宰side





────なんなんだろう､この不快感は……




太宰は顔を顰めて廊下を歩く
自分だって森のようにできた筈だ｡彼女の望むものを与えられることができた筈……




太｢……できた筈｣




では何故実践しなかったんだ､何故彼女をちゃんと見てあげられなかった？
もっと早くに行動していればこんな事には……




太｢折角……名前を聞けたのに｡もっとあの子に近付けると……思っていたのに｣




人間関係とはこんなにもややこしかったのか？
……いいや違う､私がややこしくしたのだ




太｢……はぁ｣




このなんとも複雑な気持ちを如何すればいいかと悩んでいると前方から何か黒いものが走ってくるのが見えた




『……無理です！中原さん！それ､僕の……息が､止まる､やつ……っです！』



中｢何云ってンだ！この服を着て息が止まるわけねェだろうが！｣



『窒息死します！』



中｢しねェわ！！｣




何でこの二人は私の気分が乗らない時にセットで来るのだろうか
これじゃあ機嫌が悪くなるばかりだ




太｢二人して何をしてるんだ､みっともない｣




つい､冷たい言葉が出てしまう
驚き､怯えた顔の芥川と､機嫌悪そうな中也の顔を見て胸のモヤモヤが増していく




中｢何って芥川が逃げるから追いかけてるだけだ｣



『僕はそ､それを着たくないから……逃げてるんですよ』



中｢いいじゃねェか｡唯のワンピースだ､減るもんないだろ｣



『僕の男としての尊厳が失われます』




口喧嘩している割には楽しそうな二人を見てますます苛立ちを覚える
何故､こんな思いをしなくてはいけない？こんな思いとは何だ？




太｢目障りだ｣




口にしたのはまたしても自分の気持ちと対象的な言葉




太｢私の前から消えてくれ｣




酷く傷ついた顔の芥川を見て太宰は嫌悪感を露わにする
彼女はゆっくりと近づく




『……っ､太宰さ……僕は……』



太｢近付くな！！｣



『……っ！』




────ああ､まただ｡またやってしまった
なんでこうも私はいつもいつも……




中｢おい､太宰！手前､如何いうつもりだ｡なにもそこまで云わなくていいだろうが！｣



太｢目障りだと云ったんだ､私の前に二度と現れるな｣




真っ青の芥川と怒りに満ちた中也の横を通り罪悪感に襲われながらその場を去った



執務室に戻り机の上の書類を力任せにばら撒く

なんだかんだ云いながら自分の後ろを付いてきた少女を思い出し､後悔の波が押し寄せた



side out.

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