漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百六十四話『トレーニング』 ページ7

『申し訳ございません』



森｢そんなに謝らなくていいから｡顔を上げなさい｣



『し､しかし僕は……首領を無視しずっと本を』



森｢本を読んでなさいと云ったのは私だ｡君が悪いわけではないよ｣



『……首領』




首領の優しさに感動した
読んでいた本を閉じて次の本を読もうと手を伸ばしたら森によって制され､彼の存在に気づいたのだ




森｢本は好きかね｣



『……はい､好きです』



森｢この本の山を全て読んだのかい｣



『……えっと､あとこの一冊を読めばこの本棚全て読み終わります』



森｢……ほう｣




何やら期待の眼差しを向けられている気がして芥川は視線を下げる




森｢この本棚には理論書もあっただろう？如何だった？｣



『興味深く面白かったです』



森｢それはよかった｡あ､そうそう｡君のトレーニングメニューを作ってきた｣



『トレーニングメニュー……！』




頭を存分に働かせたから体を動かすことをしたかった
流石は首領､メリハリが上手い




森｢異能力を鍛えるのもいい｡しかしね､それだけでは駄目だ｣




懐から紙を取り出して芥川に見せる
それを見て彼女は顔を顰める




森｢まずは君自身を強くしなくてはいけない｡万一､異能が遣えなくなった時に君は瞬殺される｣



『……っ』




慥かに彼の云う通りだ
今までずっと異能ばかりを遣って自分を鍛えることなんてしなかった




『……本部の周りを一周ウォーキング､腕立て伏せ､背筋､腹筋を各十回､それと武術……』



森｢武術は中也君に頼もうと思っている｡出来るね？｣



『はい､できます』




これが強くなるための方法ならば！
弱い自分を変えることが出来るのならばどんな事だって頑張れる




森｢水分補給､休憩はこまめに取って無理はしないように｡また倒れられても困るからね｡それが慣れたら腕立て､腹筋､背筋の回数を増やすよ｣



『……わ､判りました』




森の笑みにヒヤリと背筋が凍る
これは駄目だ､倒れたらいけないやつ




森｢それが終わったら私に報告に来なさい｡それじゃあね｣



『あ､のっ､首領』




ぐっと森の外套を握って行かせまいとする
彼が暫くの間､芥川を預かるという展開には多少驚いた｡だが､こんなにも自分のことを考えてくれる森には感謝しかない




『本当に……ありがとうございます』




芥川の素直な言葉に森は柔らかく笑った


いつの間にか外は晴れ､日が照っていた｡


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