プロローグ ページ1
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これはあったかもしれない物語
ヨコハマの空が今よりもっとずっと青かった頃の噺
『……さむ……い……な……ぁ』
少女は鉄格子の中でたった一人居た
生まれた頃から此処に居たのかもしれない
物心着いた時からこの場所にいた
覚えているのは頭に乗った誰かの温かい手
でもそれは一度しかない
そしてこれからも……ないだろう
『……さむい、いたい……ごめんなさい』
いつも口にする言葉
少女は言葉をたくさん知っている
しかし言葉の意味を全く理解していない
唯、“ごめんなさい”と云えばみんな自分を叩かない
『よこはま、ほん、いのう、やくそく』
暗示るようにポツリポツリと云う
『だれもいない、なにもない、すべてきえる、ぜんぶかわる』
サラリと灰色の髪が揺れる
そんな少女の前に孤独な銀色の狼が現れた
そして彼は少女にたくさんのことを教えてくれた
『……ごめんなさい』
「そこは“ありがとう”だ」
『……あ、ぁ……りが……と……ぅ』
この出会いにより運命の歯車が回り出す
……数年後
ある青年は自分が死ぬ筈だった未来を少女に救われた
ある少年は組織から抜けず、ずっと孤独の中に生き続け
ある少女は過酷な運命を背負いながらも未来を進み
ある少年は差し伸べられた手を、希望を力強く掴んだ
この世界は理不尽で悲惨だ
手を伸ばしても小さい光は踏み躙られる
『……君は?』
「中島……中島敦……です」
『私は中里A。ようこそ、外の世界へ。歓迎するよ』
────とある地下、鉄格子の中
独りぼっちの少女はそんな未来を夢見て誘われる眠気に瞳を閉じた
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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時