漆黒の狗は原作と違う為困っているそうです1【文スト】【芥川成り代わり】 (ページ38)

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第三十七話『国木田ノ疑問トハ』ページ38

与｢いきなり奇声上げたから驚いたよ｣

『……あれ､鉈は何処だ』

扉を開けた先に与謝野が立っていた
しかしその手には先程見た鉈は無い

与｢嗚呼､あれはもう仕舞ったよ｣

『なら善かった……』

強ばっていた芥川の顔が少し緩む
そんな彼女に与謝野は笑った

与｢なんだい､妾が嫌いかと思ったけど……そうでもないようだねぇ｣

『えっ……すみません｡解体の時の鉈と貴女の印象が強過ぎて……でも与謝野女医が嫌いなわけないです』

急いで否定した｡嫌いなわけがない……鉈を持たなければ､だが

『治療して頂きありがとうございました｡姐さんだけでなく僕まで……助かりました』

与｢いいンだよ､で？これから如何するンだい｣

目を鋭くさせ芥川を見つめる与謝野
彼女は肩を竦め云いにくそうに口を開く

『本部へ戻りますね｡そして組合をぶっ潰します』

与｢……ふっ､あははは！そうか､ぶっ潰すか！いいねェ｡アンタ､なかなか度胸があるよ｣

『度胸がないとやっていけませんよ､全く』

溜息混じりに項垂れる芥川の頭に与謝野は手を置く

与｢話してみたらそんなこと無かったねェ｣

『……？何がですか』

与｢いいや､何でもない｡国木田が呼んでたから行ってあげな｣

『え”』

うわっと顔を顰める芥川に与謝野は面白そうに笑う
半ば強引に背中を押されながら社員のいるフロアへと入るが､呼んだ本人はいない

『あの……ｺﾞﾎｯ､おい……国木田は奴は何処だ』

国｢此処だ｣

『うおっ』

彼女の後ろからドスの効いた声が聞こえた｡恐る恐る振り返ると社の重鎮､国木田独歩が仁王立ちしていた

『ぐ､出た……じゃなくｺﾞﾎｯ……国木田か……ｺﾞﾎｯ､僕に何の用だ』

国｢お､お前に､きっ聞きたいことがある｣

『詰まらぬものならば､きっ斬り倒すぞ』

互いに冷や汗をかきながら様子を伺い､辿々しく言葉を発し一歩も動かない二人

そんな彼等を敦は慌て､与謝野と乱歩は興味津々で見つめ､谷崎は怯えた表情で隠れていた
……賢治にいたってはまだ寝ている

『それで……』

最初に口を開いたのは芥川だ｡ビクッと肩を揺らす国木田に芥川は更に眉を顰める

国｢……その､こんな事を云っていいのか判らないが､お前は……

────女なのか？｣

敦/谷｢｢そこ！？｣｣

すかさず国木田にツッコミを入れる敦と谷崎
芥川はポカンと国木田を見つめていた

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