放 課 後 、 音 楽 室 に て 。【一松】

eight* ページ10

何とかC棟からB棟まで歩いてきて、やっと校門だ。


B棟は真ん中の棟だから、校門が目の前にある。


まあ、遠いんだよね。私達一年生はA棟、二年生はB棟、三年生はC棟。


二年生が一番楽だから、いいなあ。


あ、勿論私はC棟がいいよ？音楽室、近いし。


やっと辿り着いた玄関。


｢……あれ？閉まってる｣


いつもなら開いてるのにな……。


靴を履き替えて、玄関のドアに手を掛ける、が。


ガタッ


｢…え？開かない……｣


嘘でしょ？


驚いて、携帯を取り出した。


時間は……七時！？


｢や、やばい｣


下校完了時刻は六時半なのに……、閉じ込められたかな、これは。


ドアを調べても内鍵無いし。


うーん、と唸っていたら急に肩に何かが乗った。


｢ひっ……！な、なに？！｣


慌てて後ろを振り向くと、


｢え……一松君？それともトド松君……いや、カラ松君……？｣


あの松野の六つ子の誰かがいた。


私の肩から手を退かすと、その手を自分の腰に当ててこう言われた。


｢貴方、もう下校時間過ぎてますよ？｣


｢あ、え。あ、それは……知ってます｣


｢知ってるんですか……なら、早く帰って下さい｣


やれやれ、といった調子で溜息を吐かれる。


彼は、誰なのだろう。


カラ松君、一松君、トド松君とは違ってパーカーも着ていないし、

制服のボタンは上から下まできちんと留めてある。


髪の毛も綺麗にまとめられていた。


｢いや、あの……開かなくてですね、はい｣


｢それは貴方が悪いです。時間を守らなかった貴方が｣


｢だ、だから知ってますって……！｣


な、何だこの人。


凄い真面目だ……怒られる。


それに、よく見たら生徒会の腕章付けてるし。


｢はぁ……まぁ、今日は見逃しますが、次からは気を付けてくださいね？今、ドア開けるので｣


｢え、あ。ありがとうございます……？｣


｢何で疑問形何ですか……｣


｢あ、ありがとうございます！｣


｢……はあ、｣


溜息を吐いたっきり、彼は何処かへと歩き出した。


きっと、ドアを開けてくれるのだろう。


あ、名前聞くの忘れてた。


｢あの！名前なんて言うんですか！｣


大きな声で呼びかけると、やけに廊下に反響した。


｢……松野チョロ松です、三組｣


｢わ、分かりました！私、Aです！ありがとうございました！｣


ぺこりとお辞儀をすると、彼はいなくなっていて、

私に応えるかのようにドアが開いた。

nine*→←seven*

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す