放 課 後 、 音 楽 室 に て 。【一松】

twenty two* ページ25

｢えっと……なんか、迷惑掛けてごめんなさい｣


｢良いですよ、別に。ただ、こんな兄弟みたいに騒がなければ｣


｢あ……うん｣


ただ一人、床に礼儀正しく正座するのはチョロ松君。


ぶつけた所に湿布を貼ってもらってから、痛みは引いていた。


そんなチョロ松君とは対照的に、おそ松君達は…………。


｢はっはっはー！！俺のダイナミックおそアタックだ！！｣


｢ぐわああぁあぁー！ま、まさかおそ松兄さん、そんな手札を隠しているとはっ！｣


｢はい残念、僕のキューティーフェアリーハートで終わりでーす｣


｢うわあ、トド松……酷いな｣


｢トド松強いね！！一松兄さんは？｣


｢……なんも、揃ってない｣


…………トランプをしていた。


何だか技名がダサい気がするのは、私だけだろうか？いや多分、チョロ松君も思ってるよね。


顔が歪んでるし。


……なんかこうして見ると、六つ子とは言えど、やっぱり顔にも違いがあるんだなぁ。


チョロ松君の目、三白眼だし、口はへの字。……大変そうですね。


…あれ、私何しに来たんだっけ？


｢……い、一松君、私……どうすれば｣


このままでは、ピアノを練習する時間が無くなってしまうじゃないか。


早く練習しないと。


｢ん…………あっ、そうだ、練習｣


｢忘れてたんだね！？｣


｢全く……これだから一松は…………すみません、Aさん｣


｢あ、あぁ……だ、大丈夫です｣


今ならチョロ松君の気持ちが分かるかもしれないと思った私だった。









脛をぶつけた階段を下りると、右に曲がって、突き当たりを左に…………、

そのまま真っ直ぐ行って……、


｢……広いね｣


｢うん……うち、六つ子だから多分大きい家なんだと思う｣


｢へぇー…、私、もう迷っちゃったよ｣


｢それは大変だね〜僕も迷っちゃうことあるけどさ｣


……んっ？一松君と今二人きりなハズ何だけどな……。


ふっと後ろを振り向くと、目の前にキラキラした笛が現れた。


｢じゃーん！僕も行くよ〜っ！｣


｢と、トド松君か……！びっくりした｣


｢玄関でも驚いてたよね〜｣


ぐぬぬ……その通りです。


実は怖いのが苦手なんだよね、私。



｢……何、お前も練習するの？｣


反射的に立ち止まる一松君。


その声は少し苛立ちを含んでいるような気がした。


｢うんっ！……練習しちゃいけないの？｣


｢……別に｣






何だこれ、何だこの空気。


急に気まずくなったんだけど……。、

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