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万次郎と手を洗ってダイニングに向かうと、料理を並べ終わったエマがどこかぎこちなく「おかえり」と言った。チラチラとAの様子を見ながら席に着く。後から来た祖父もまたわざとらしく咳を零し、「まぁ、兎に角席につけ」と一言だけ告げた。
全てを知っている万次郎だけが面白そうにその光景を眺めており、何も知らないAはいつもと違う空気に戸惑う。
Aは子どもだけれども空気の変化には敏感だ。
そうでなければ、あの家では生きていけないからだ。
空気は吸うものではなく読むもの。読めなければ吸うことさえも許されない。
父親が苛立っている時は真っ先に押し入れへと逃げた。
母親が男を連れて来た時はすぐにベランダに出た。
狭くて苦しくて寒くて痛くても、死ぬよりはマシだからと言い聞かせて、体育座りをしたままただじっと息を潜めた。それが、物心がついた時からの日常だった。
「……」
「A何食いたい？あ、これ要る？」
「それはマイキーが嫌いなだけでしょっ」
「あれ、バレちった」
「Aちゃんにはエマがこれあげる」
「それエマが嫌いなやつじゃん」
自分の小皿に沢山乗せられたおかずを見て、Aの中の不安が募る。
やけに自分に優しくて、やけにソワソワとしている周りの人たち。それを面白がっていている万次郎にすら不安が蓄積し、上手く咀嚼ができない。
普通ならいい方へと考える場面でも、Aは悪い方にしか考えられない。悪い方にしか転がらない世界で生きてきたからだ。
期待することを止めたAの思考は、ただただ悪い方へと突き進む。
＿＿＿＿＿＿もしかして、今日の話し合いで、何かあったのだろうか。
やっぱり、迷惑だったのだろうか。
それとも、今日を最後に、捨てられるのだろうか。
迷惑な自分が居なくなるから、みんな喜んでいるのだろうか。
Aは、やっぱり、いらない子なのだろうか。
一度考え始めるとなかなか止まれない。習慣化してきた万次郎との風呂も済ませ、いつものように部屋で使い古したタオルケットに包まり、Aは彼の腕に抱きしめられた。寝る時はいつもこの体制だった。
「……」
＿＿＿＿＿＿家全体が寝静まった頃、もぞもぞと万次郎の腕の中でもがき、ベッドから抜け出すA。
そして何か持っていくものはあるかと辺りを見渡して、自分の物は一つもないことに気づき、裸足のまま家を飛び出す。
この日の夜、万次郎の部屋からAの姿が消えた。
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レモン - サイコーすぎんだろ‼️ 応援してます😆 (2022年7月2日 13時) (
レス) @page50 id: 97f09e59d6 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ぺたごんさん» ありがとうございます！今日中に続編に移行するつもりなので、続編もよろしくお願いします！ (2021年11月13日 8時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ぺたごん - すごくすき愛した だぁじに悶えてます 続編待ってます！ (2021年11月13日 1時) (レス) @page50 id: 660f048392 (このIDを非表示/違反報告)
無塩バター(プロフ) - ただのバカですさん» そうです三ツ谷くんです（笑）多分本文でも書くと思うんですけど、みつや→みつゃ→みちゃ 的な流れから、みちゃになりました。続きものんびり頑張ります！ (2021年10月23日 0時) (レス) id: aad7259adc (このIDを非表示/違反報告)
ただのバカです - みちゃ？あっ、三ツ谷くんの事ね。え！？可愛くねぇ？みちゃだよ？胸取れるわ。ムフフ続き楽しみに待ってます。 (2021年10月21日 7時) (レス) @page45 id: acf5fa610c (このIDを非表示/違反報告)
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