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敵の姿−11− ページ41

向島に続いて毛利も言う。


「犯行日の28日前後から2日後の遺体発見までガイシャの目撃情報もなければ、スーツケースを運んでた人間の目撃情報もないんです。どっから来て遺体を置いて行ったのか……犯人はまるで透明人間ですよ」


−ガタン

毛利のその言葉に、中堂は勢いよく音を立てて立ち上がるとる会議室から出て行った。
Aは、それを切なげに見つめる。

階段を降りて行く途中、中堂は思い出す。





−10年前


「はい、いらっしゃいませ〜何にします?」


定食屋に入ると、女性の明るい声が聞こえてきた。


「ええと……何がおすすめ?」

「えっとー、私のオススメは、チキン南蛮です!」

「ああ……じゃあ、それを」

「かしこまりました〜」


彼女は笑顔でメモを取った。
料理を食べていると、接客中の彼女の声が聞こえてくる。


「いや、もうね美大出てもちっとも食べられないんですよ」

「また〜」

「いや、ホントですよ〜奨学金返しながら細々」

「賄いで生きてるんだもんな」

「ちょっとバラさないでよ〜」


店主の言葉に焦った声をあげた。

また、別の日。
定食屋に行くと客は一人もいなかった。


「終わり?」

「あっ、私が作るので良ければ、どうぞ」


席に案内されて、出された肉じゃがを食べていると、チラチラと彼女がこっちを見てくる。


「ああ〜クソ気になる!何なんだ?」

「ははっ」


彼女はカウンターから出てくるとスケッチブックを取り出した。


「色男に描けた!」


そのスケッチブックには自分が描かれていた。驚きと恥ずかしさに、つい悪態を吐く。


「かっ……勝手に描くな」

「……どお?」


それでも、彼女はめげずに明るかった。


「うわ〜凄い!キレイ」


ある日、夕希子とピクニックへ出かけた日。
暖かな気温と、色とりどりの花が一面に咲き乱れている。
レジャーシートを広げ、お弁当を食べていると夕希子はカバンを漁り出す。


「ねぇ、見て!……ついに、1冊目がだせました〜!」


そう言って出てきたのは絵本だった。


「凄いじゃないか、これ」


“茶色い小鳥”と書かれたタイトルの絵本を捲っていく。


「こいつは……死んだのか?」

「そう。そして、」


ページをひらくと黄色い花が描かれている。


「綺麗な花になる」

「どういう理屈だ?」

「ふふっ、理屈じゃないの」


そう言って夕希子は微笑んだ。




.

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鞠香(プロフ) - ともみさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!頑張ります! (2018年3月19日 19時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - おもしろい!更新楽しみにしてます! (2018年3月19日 2時) (レス) id: f743b881db (このIDを非表示/違反報告)
鞠香(プロフ) - 青龍 葵さん» こんにちは。ドラマの疾走感凄かったですね!完結はもう少し先になりますが、それまでお付き合い頂けると嬉しいです!優しいお言葉ありがとうございました。頑張ります! (2018年3月17日 18時) (レス) id: 3fdde94521 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - あっという間にドラマ終わっちゃいましたが、どのような最後(完結)になるんだろう?中堂さんとの関係は?とか思いながら、まだまだ完結は先かと思いますが無理のない程度で頑張って下さい!更新、楽しみにしてますw (2018年3月17日 4時) (レス) id: 7069733e86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年3月11日 14時

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