其の肆 ページ23
食堂開始時間を知らせる鐘が鳴った。
昨日みたいに誰かと話し込んでしまうとおばちゃんに殺気を向けられるので、早くに行って混む前に退出しようと考えた。
私が一番乗りのようだった。
「あらAちゃん、おはよう」
「おはようございます。だし巻き卵定食をお願いします」
「はいよ、お残しは許しまへんで!」
少しも視線を感じない、静かな朝ご飯。
ふんわりだし巻き卵は、箸で押さえるとジュワジュワとだし汁が溢れてくる。顆粒だしに頼らないおだしは旨味が違うね…!
ふと視界の端に藍色が映り、それは私の前で制止する。
「すみません。ご一緒していいですか?」
蜂蜜色したフサフサ髪の男の子がにこりと笑って訊ねる。藍色の装束は確か五年生だ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます!」
丁寧に「頂きます」と言って私と同じだし巻き卵定食を食べ始める。
「あの、Aさんでしたよね?私、五年ろ組の鉢屋三郎と言います。」
「鉢屋三郎さん。よろしくお願いします」
「風の噂で十六歳だとお聞きしました。呼び捨てで敬語も使わないで下さい。」
「うん、分かった。それでは三郎で」
「ええ、そうして下さい!」
溌剌として笑顔が素敵な人だなぁ。
「そういえば、ここでは委員会活動が盛んだと文次郎君に聞いたんだけど、三郎も委員会に入っているの?」
「ええ、私は学級委員長委員会ですよ!」
「学級委員…て事は庄左ヱ門君も?」
「えっ、どうして庄左ヱ門を知っているんですか?」
「さっき挨拶に来てくれて、少し話したんだ」
「へぇ〜、そうだったんですね!もう結構色んな人と話したりしたんですか?」
「うーん、10人くらいかな?」
「へえー、名前って覚えてます?」
「えっと…仙蔵、文次郎君、伊作君、七松、食満、長次さん、喜八郎君、庄左ヱ門君、滝…夜叉?丸君、かな?」
「じゃあ五年生では私が一番乗りですね!」
「うん、そうだねぇ」
「あ、そうだ。今日の夜は課外実習で六年生がいなくなるんです。なのでその間は私達五年生を頼って下さいって話をしたくて話し掛けたんです」
「そういえば仙蔵が実習あるから二度寝するって言ってたなぁ。三郎、わざわざありがとう!困った事あったら頼らせてもらうね」
「ええ、任せてください!」
人懐っこい笑顔で
すごくいい人だなぁ。
94人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時