其の肆 ページ4
用具を外へ運び終えた後は、頭巾で鼻と口を覆い、ハタキで棚上を叩いたり、硬く絞った濡れ布巾で棚を拭いたりし、床を掃いた後、用具を戻して終了だ、と一連の流れの説明があった。
しんべヱ君と平太君、作兵衛は私よりも背が低いので、低い所は彼らに任せ、背伸びをしたりして棚の高い所を積極的に掃除していた。すると留三郎が私のハタキを取り上げて、スイスイ棚の一番上を掃除し始めた。
「一番年上なのにチビだなぁ。身長は作兵衛と守一郎の間だもんな」
「んなっ、ほっといてよ!」
「はははっ、悪い悪い。小柄で可愛らしいって事だよ。
無理しなくていい。高い所は俺と守一郎でやるから、Aは箒で掃いてくれ」
頭をポンポンと撫でて作業に戻る留三郎。あの男前フェイスで唐突の可愛い発言はずるい。
いや、可愛らしいのは身長についてだってのは分かってるんだけどさ。
「よーし、これで終わりだ!皆ご苦労だったな!」
全ての作業を終えた頃には滝のような汗をかいていた。
ひとっ風呂浴びるかー、なんて言い合っている男子が羨ましい。私は入れる時間が夜の四半刻だけと決まっているからだ。
「いいなぁ、私は夜までお預けだー」
そう呟いたのをしんべヱ君が聞いていた。
「そうだ!暑さを吹き飛ばすいい方法がありますよ!僕もお風呂じゃなくそちらにお付き合いしますから行きましょう!」
「えっ、しんべヱ君優しい…!可愛い、尊い…」
「A、心の声が漏れてるぞ。しんべヱ、一体何を思いついたんだ?」
「えへへー!Aさんついて来て下さぁい!」
しんべヱ君について行くと、見覚えのある池で足を止めた。先日、留三郎と月見をした月見亭の池だ。
「ここは会計委員会がいつも鍛錬している池じゃないか」
「ここで水浴びすれば身体の火照りもすぐに引きますよ!」
躊躇なく池にザブザブと入っていくと、とても上手に背浮きをして、Aさんも早く〜と催促する。
私も足を入れてみると、太陽で温められた池の水は冷た過ぎずぬる過ぎず、ゆっくり火照りを覚ますのにちょうどよかった。
「わ、気持ちいい〜!」
「もう少し深いところに行きましょう、僕絶対沈まないので掴まってください」
「本当だ!とてつもない浮力!」
謎の感動を覚えたところで、作兵衛も池へ入って来た。
「しょうがねーな、しんべヱだけに任せてるとなんかあった時に困るからな!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時