【忍たま】君の想いは花筏【竹谷八左ヱ門ルート２】

其の伍 ページ5

「だけど、もしも俺が人攫いだったら間違いなくAを狙う。もちろんそんな輩が現れたら助けに入るが、自分でも気をつけてくれ」


「そりゃあ八左ヱ門は私が未来人だって知ってるから利用価値はあるかもしれないけど、他の人は知らないでしょ？」


「そういう返答をする辺り、まだこの時代の危険性を分かっていないようだな。現在この国では人身売買が横行している。
戦場付近には○(奴)○(隷)商人が居ることもある。今は戦続きで農業従事者があちこちで足りないからそっち方面で買われる事が多いみたいだ。
園田村の件では黄昏甚兵衛の制札を手に入れただろ？あれが無くて且つ俺達が負けていた場合、Aは傾城屋(けいせいや)に売られていただろうな」


「傾城屋って何をしているの？」


「女を着飾って売色させる商売だよ」


つまりは遊女として働かされていたかもしれないってことだ。


「あるいは、黄昏甚兵衛に見初められて妾とされたかもしれない。南蛮人や倭寇に引き渡されて海を渡ってたら探す術を失っていた。分かるか？未来人であろうがなかろうがこの時代では安穏とはしていられないんだ」


馬鹿な私はやっと事の重大さを実感した。つまらない意地を張っている場合ではなかった。まさか人身売買が“横行”と表現されるくらい発生しているなんて。それも海外へ売り飛ばされる可能性があったなんて。そりゃあ八左ヱ門も必死になって止めるだろう。
となると、二つ返事で了承して下さった学園長先生は何を思っておられたのだろう。


「私は華がないから売られるなら農業の方だと思うけど、しっかり気を付けるね…！！」


私の身体は少し強引に八左ヱ門の方へ向けられる。


「自分の顔の良さ自覚してないのか？」


「ん？別に普通でしょ…？」


令和の世でも特段モテたということもないと思う。記憶は無いが。


「Aは世界一可愛いよ」


「いや世界中の女性見たことないでしょうが！」


特にこの時代はテレビも無いんだし、ほぼ日本人女性しか知らんでしょ！


「うん。でも間違いなく世界で一番可愛い」


根拠のない褒め言葉だけど、他でもない八左ヱ門に言われるのはとっても嬉しい。その真剣に言ってる顔を録画しておきたいくらいときめいてしまったよ！！

心の中で悶えていると、突然八左ヱ門の手が頰に伸びて、私に口付けを落とした。


「その照れた顔もすげえ可愛いの。口付けだけで我慢するのがやっとなくらい」

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