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逢い引き ページ8

あれから時は過ぎた。

私、水瀬Aは恋に生き、恋に死ぬ人間なのかもしれない。


どうして私は今鏡の前に座って髪を竹櫛で梳かしているのだろう。いつもは手櫛で済ませるくせに。


それに加えて、しのぶから貰った着物や綺麗な巾着を持つ辺り、もう私じゃない。色恋に浮かれた町娘だ。


「あらあら、すっかり女の子らしくなりましたね‼誰もが振り向く程の美人です、A」

「そんな事無いわ。しのぶの方が綺麗よ」


私がこうやってお洒落しているのは今日が非番だから、と言うのもあるが、これから煉獄さんと出掛けねばならないからだ。治療してくれたお礼がしたい、との事。


お礼だなんて…貴方が私の名前を呼んでくれただけでもう儲けもんだったのになんでそんな尊い事を…。駄目だ、もっと好きになってしまう。


昨日まで散々わんわん泣いていたから目が腫れぼったい。だって、憧れの人と一緒に街を歩くのよ?惨めすぎるわ…私が。せめて、隣を歩いていても恥ずかしく無いくらいおめかしをしなければ。


しのぶは私の周りを二、三周回って服装を吟味する。思い出したように人差し指を上げた。


「そういえば、包帯巻き直しました?」

「あ、まだ。巻いてくれる?」

「勿論ですよ」

そうだ。昨日の夜から取り替えていない。右腕を差し出すと、しのぶが包帯を取り替えてくれた。優しい子だ。


「これで完璧です。笑顔を忘れなければきっと大丈夫。煉獄さんも惚れに惚れ直しますよ‼」

「そうかな…そうだと嬉しいな」


全く自分に自信は無いけれど、しのぶがそう言うんだ。少しは信じてみよう。


庭先から大きな声が聞こえてくる。



「頼もう‼Aに逢いに来た‼」



もう約束の時間らしい



「楽しんで来てくださいね。お土産話待ってますよ」


いってらっしゃい と背中を押される。心臓が鳴り止まない。嗚呼、どうしよう。この姿を見て変に思われたりしないかしら…。


どきどきしながら庭先まで向かうと、煉獄さんと目が合った。隊服じゃないから、多分彼も今日は非番なのだろう。和服がしんどい。やばい。脳内永久保存物だ。


どうしよう、どうしよう。引かれたりしてないかしら…


ゆっくりと口を開く。私はその言葉を聞き逃さなかった。


「凄く…凄く綺麗だ‼一瞬天女か何かに見違えたぞ‼」


胸が キュッ と鳴って締め付けられる


「こっちの台詞です‼煉獄さんこそとてもかっこいいです‼」


やっぱり好きだ。大好きだ。この思い、伝わらないでくれ

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橘欅(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!幸せな気持ちになっていただけるなんて…光栄です!どうかこの作品をご贔屓に! (2019年11月13日 16時) (レス) id: 4f6b87549d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 主人公が可愛らしくて好きです!煉獄さんとのやり取りが微笑ましくて読んでる側もすごく幸せな気持ちになります! (2019年11月12日 16時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:橘欅 | 作成日時:2019年11月10日 22時

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