【マギ】政務官と護衛官 (ページ6)

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第5夜ページ6

『酒が足りないわよ～っ‼早くお酒持ってきて頂戴よ‼』

そろそろ飲むのやめなって。いくらアンタの為に開かれた宴だとしても、流石に酔い過ぎ。

シンドリアの人達結構引いてるよ。私もなんか恥ずかしいからさ、程々にしなって。

酔い潰れた姉にお酒と偽って、杯に水を注いだ。本当は頭からかけてやりたい気分だったけど、それは流石にやり過ぎだろう。

…全く、アンタは明日になれば綺麗さっぱり記憶が消し飛んでるだろうけど、何も飲んでないし食べていない私はばっちり記憶が残ってるんだから。後処理大変なのよ。

頬杖をついてぼうっと月を見上げていたら、隣から声が聞こえた。

『君は飲まないのかい？』

『ッ……』

あ、危ない。姉貴が私を喋れない設定にしたのを忘れて普通に『はい』と答えようとかてしまった。シンドバッド王…侮れないぞ。

結果的には空気が喉に詰まっただけだから怪しまれなかっただろうけど、首をふるふると振って拒否の意思を表しておいた。

私は酒が好きでよく一人でちょこちょこ飲むが、公の場では飲まないと決めている。それに、ここで飲食をしようとしたらヴェールを脱がなければいけないので速攻で性別がバレてしまう。

別に性別がバレるのが問題なわけではないが、身元がバレるのが問題なのだ。それについてはまた長くなるから話さないでおこう。

『君はAと云ったね。例え声が出なくとも君は君自身の意思を持っているだろう。いつか、君の言葉を聞かせてほしい。これからよろしく』

歯を見せて屈託無く子供のように笑うシンドバッド王はとてもカッコよかった。嗚呼、巷の女性が惚れるのも無理はないと純粋にそう思った。…私は惚れなかったけどね。

私も言葉が話せない(設定)なりに精一杯の誠意を見せよう。片膝をついて、シンドリアの敬礼をしてみた。