365日 (ページ5)

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MONSTER⑤ ページ5

足取りは重いが、気持ちは逃げるように
空へ向かっている。
屋上へ出ると、ベンチに寝転んだ。

青い空に薄雲が浮かんでいる。
まるで、海に波が立っているようだ。

目を閉じると、様々な感情が渦を巻く。
私は、うまく笑えていただろうか。

首から下げているロザリオを、ぎゅっと握る。
この動作も、すっかり癖になってしまった。

私の生は、何人もの死の上に成り立っている。

こんな未熟な精神では許してもらえない。

このような感情を持つなんて、贅沢だ。

私は、今のこの幸福な環境に
ただただ感謝をしなければならない。

考えないようにと耳を塞いでいたが
そう思えば思うほど、考えてしまうという矛盾に
逃げ場がなく、迫りくる闇に
囲まれている様子を想像する。

そっと目を開けると、いつの間にか
太陽は雲に隠され、日陰になっていた。

少し肌寒さを感じ、屋上を後にしようと起き上がる。

「Aさん？」

ふいに呼ばれ、振り返ると
久部さんが心配そうな顔をして立っていた。

『久部さん。何かありましたか？』

今まで沈んでいた暗い海から必死で這い上がり
悟られないよう、濡れたまま
いつもの感情の服を着る。

「いえ…僕ではなく…。
Aさん、大丈夫ですか？」

久部さんは始め、言いづらそうにしていたが
まっすぐに目を見て言われる。

『何がですか？大丈夫ですよ。
すみません、少し風に当たりたくなっただけです。』

薄っぺらい笑顔を貼り付け
さ、戻りましょうと屋上のドアを開けて
久部さんを導く。

久部さんは納得がいっていない様子だったが
それ以上何も聞かず、代わりにドアを支え
先に通してくれた。

「僕にできることがあったら
なんでも言ってください。」

UDIラボのみなさんは
なぜこんなにも優しいのだろう。
そんな方たちに気を遣わせないためにも
もっとうまくやらないと。

『ありがとうございます。
心強いです。』

改めて気持ちを引き締め、立て直し
今度は、いつも通りの笑顔で言えた。