【マギ】ニート、異世界に召喚されました。

42＃重ねた憧憬、実る幸福 ページ43

『…っはい…！』


たった二文字の、素朴な言葉。
それだけを言うのにも緊張して、一瞬喉で詰まった。

ジャーファルさんに抱き着く力を少し強め、今にも膝から崩れ落ちそうな体を必死に力ませる。するとそれに気づいたのか、彼は片手で私の腰を自分の方へグッと引き寄せた。


一年ほど前から抱えた懊悩は現在、歓喜と驚きがぐちゃぐちゃに入り混っている。
私の告白が失敗して彼との軋轢が生まれてしまったらどうしようかと考えていたが、どうやら心配無用だったようだ。

今はもう、とにかく嬉しい。目に映るすべてのものが輝かしく見えるほどに。これほどまで人に陶酔し憧憬を重ねたのは初めてだろう。

ああ、私の恋心を知っている煌帝国の女性たちに、良い知らせが出来そうだ。
そう思っていた時、耳元で不意にジャーファルさんから、


「アレルさん、アレルさん、」


と。まるで内緒話でもするみたいに名前を呼ばれた。

恋人の肩口から額を離し、愛しい彼の顔を下から覗き込むように見上げる。すると頬に手が添えられ、触れるだけの口付けを落とされた。初めての感覚に、唇が甘く痺れた。


『…な、なな、なんっ…！？』

「っ…」


私の言葉を優しく包んで食べるみたいに、今度は啄むようなソレ。

もう、なにも言うな。
そう言われた気がして私が黙れば、彼は満足そうに微笑んだ。今はただ、自分の恋が実ったという事実と幸福感を堪能したいのだろう。

ならば私もそうすることにしよう。

私は彼に少し体重を預け、再び肩に額を乗せた。



愛しくて堪らない。

ねえジャーファルさん。
あなたも私と同じ気持ちだといいなって、思います。

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