【マギ】ニート、異世界に召喚されました。

37＃あれから一年 ページ38

「もう、アレルちゃんったらテンション低いわよ？どうしたの？」

『あ、いや。好きってことには気づいたけどさ、告白しても叶わないんだろうなあ…って』

「そうかしら？きっと大丈夫よ！」

自信満々に言う紅玉。何でそんな確信をもって言えるんだろう。彼女に訊ねると、

「そりゃあもちろん、乙女の恋はいつか必ず叶うものって相場が決まってるからよ！」

なんてドヤ顔気味に返された。その言葉の後に彼女は「まあ、私は実らないような恋をしてしまったから、そんな恋愛方程式を証明することは出来ないけれど。そうなればいいなって思うわ」とも。

そんなやり取りを終えた後、私と紅玉は無我夢中で恋の話をした。恋物語のおつまみは紅茶とクッキー。…私の想い描く未来も、お菓子のように甘ければいいのにな。とか、願うだけじゃあ叶わないか。

*

姫君と初めての女子会というものをしてから、本当に色んな事が起きた。


ジュダルは相変わらず戦争好きだから、他国をよく挑発しては傷をひとつふたつ作って帰ってくるし。

紅明様はジュダルが起こした戦争の不祥事を隠蔽するために裏で他国のお偉いさんといがみ合っておられたし。

紅炎様は食事も摂らずに書斎に籠っておられたせいで倒れたことも一度や二度じゃない。いや、確か白瑛さまが心配して食事を運んでいたような。

白瑛様は厨房に行ったかと思いきや、黒くて食べ物とも思えない悪臭を放つ異物を皿にのせ紅炎さまに手渡していた。…あれ？今思うと紅炎様が倒れたのは、ひょっとして白瑛さまのダークマターのせいなんじゃ…。

白龍様は青瞬と薙刀の稽古をして見事に敗北。泣きながら私に慰めてくださいと縋ってきたときは驚いた。

紅覇様は仕事の気晴らしをするために各地の温泉巡りの旅に出ておられた。やっとお戻りになられたと思えば黒髪の絶世の美女を連れて帰って来たのだから、皆惚気る惚気る(因みにその美女は睡蓮さんという、私が仕えることになった人だ。私が仕事で失敗しても優しく許してくれたいい人)。

紅玉はシンドバッド王に振り向いてもらう為、私や女官と度々女子会を開いては自分に磨きをかけていた。


あれから一年。
かくいう私は今、海の上にいる。船に乗り、本来の職場であるシンドリアに帰る為だ。


そして＿



あの人に、たった二文字の想いを伝えるため。

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