【派生作品】レモンハートの子守唄 (ページ2)

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入省初日ページ2

「紹介しよう、今日から枢軸省で勤務することになったフォード・クラレンス君だ。こういう所での仕事は不慣れらしいから、色々と教えてやってくれ」

　そう言って、ヴァクセナーは僕の背中を押した。それが僕の枢軸省での勤務初日の、最初にあった出来事だ。他の職員たちは笑顔でよろしく、だとか言ってきた。こんなふうに接してくれるのも、多分初めのうちだけだ。
　正直なところ、なぜ僕がこんなところで働かなければいけないのか分からなかった。僕はつい最近、兄弟と話しているのを邪魔してきた連中を殴った。そうしたら、そいつらの仲間たちが大勢で襲いかかってきたから応戦した。でも結局やられて、枢軸省の奴らに捕まった。逮捕されて犯罪者扱いさせるかそのまま死ぬかだと思っていた。どちらでもよかった。
　でもそのどっちでもなく、僕は枢軸省の連中の仲間になることになった。理由はよくわからない。省長のヴァクセナーやその他の職員たちは「誰もが笑って暮らせる世界を作りたい」と言っていたが、関係はあるのだろうか？

「フォード君、ここが君のデスクだ。とはいっても、街中でのパトロールだとかもあるし、いつもここにいれば良いという訳ではないけれどね。ともかく、新人用のマニュアルが机の上に置いてあるだろう？今日はあれを見ながら、この職場について学んでおいたらいい」

　ヴァクセナーが指した先には、灰色の地味な机とホチキス溜めの冊子が置かれていた。他の机と違って物が少なく、なんだか無味乾燥な印象だった。

「お気に入りの雑貨とか、そういうのがあれば置いてもいいんだよ。自分のスペースからはみ出さない範囲でなら、ね」

「へぇ」

　僕は話しかけてきた職員に適当に返事をして席についた。

　それが僕らの、枢軸省での生活の１日目だった。