閃輝暗点の夜 -2- 【イナイレ】

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ベッドに寝転がって背を向けてしまう。兎は黙ったまま、しばらくして静かに俺の部屋を出た。

『お前、Aなのか。』

その一言は喉元まで出て、口から出せず飲み込んでしまった。
もしもそうだと言われたら、どうすればいいか分からなかったからだ。

それでも掴んだ細い手首が、抵抗できないほどの弱い力が、泣きそうに潤んだ目が、
残酷にも兎が本当は男ではない可能性を俺に強く訴えていた。

響木監督が俺を誘いに来たあの日。
奴は俺にFFIの件だけでなく、もう一つ妙な質問をしてきた。

「お前、兎と名乗る男に誘われて影山の脱走に協力したそうだな。」

だったら何だよ、と返せば

「そいつは本当に男だったのか。」

そう言った。



兎が本当に男だったのかって？
当たり前だろ、だってアイツは…

アイツは、中性的な顔をしているけど。
体格の分からないようにいつもダボダボの服を着ていたけど。

ホテルの同じ部屋に泊まったこともあったのに。
女だったら、気づかないわけ…。

そんなわけない、と言い聞かせた。

言い聞かせたけど、奴は綻びを見せた。

明らかにAのことを知っていた。
俺たち家族の昔のことを知っていた。

「恨んでるんだろ」と強く言いながらもアイツの怯えた顔が、震えた声が、

どうしようもなくそれが現実だと俺に叩きつけるようで

どうして正体を隠すんだ。
何で本当のことを言わないんだ。

当然答えは目の前にあった。
俺がAを恨んでいるとあいつが思っているから。
あいつ自身が背負う必要のない責任を背負っているから。

「チッ…何だってんだよ、クソッ。」

どうしてこう、いつもぐちゃぐちゃなんだろうか。嫌になる。

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