両想い確定案件

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甘やかされてるなぁ、って自分でも思う。


それが翼の優しさってことは、何年も前にわかったことだ。


その優しさと、この立場を利用する私を今だけ許して？


「翼に好きな人なんて、何年ぶりだろ」


当たり障りのないところから入っていく。


いや、唐突すぎ？不自然？意識してるのバレてない？


都合のいいことに、翼は私といると気が緩むらしく、あまり考えずに答えてくれた。


「うーん、何年ぶりっていうか、初めてかも」

「そ、そっか、そういえば翼から好きな人の話聞くの初めて」


「俺、あの子に助けてもらったんだよね、悩んでたとき。惚れるじゃんそんなの」

「浜田行ったばっかりのとき？」

「そそ、俺あのとき受験も失敗して、鼻もどうにもなんなかったし、最悪だった。」


翼が悩んでいたことは知っていた。


でも、受験なんてデリケートだし、保険をかけた私は第一志望に受かってしまったし、何と声をかければいいのかわからなかった。


鼻のことだって、自嘲気味に笑ってたのを見てることしかできなくて。


そこをあの子はどうやって懐柔して入り込んだというのだろう。


……、勝てないのかもしれないな、根本的に。



翼がマスクをつけ始めたのは転校してすぐだった。


突然マスクをし始めたもんだから、最近マスク族多いし、翼もその仲間入りしちゃったのかなとか心配してたんだけど。


すっごく嬉しそうに、“コヅカ”っていう人が作ってくれたと報告されたので、世の中にはそんなすごい人もいるんだなと思った。


翼の鼻のことを理解してくれて協力してくれる大人がいたんだって、そのときはこっちまで嬉しくなった。


後から知ったのだが、どうやらその“コヅカ”さんは中学生らしい。


しかも同い年。


正直想像が追いつかなくて、私の中の“コヅカ”さんは、無口で難しい顔して試験管を傾けている研究者だった。


いつか会ってみたいかも。

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