世間は勇者の目を見るか？ (ページ10)

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ヒーローとはページ10

｢…今更ながら…一人ってのは寂しいもんだな…｣

自分以外誰もいない事務所で、ソファーに腰掛けポテチを摘まむ。

かつての騒がしい友も、話しかけてくれる仲間もいない。
正真正銘一人ぼっち。

｢…退屈だな｣

代わり映えの無い日々が虚しくなってくる。

何か刺激を求めて、東矢は一人事務所を出た。

適当にコンビニに寄り、肉まんでも買うかと並べば、嫌でも耳に入ってくる。

｢ねぇねぇ、あの人ってあれじゃない?ほら、何か無愛想で怪しいヒーローっぽい人｣
｢あーホントだ…ノーブルグリーン?だっけ。うわぁ怖そうな顔w絶対何か悪いこと企んでるって｣

｢…｣

自身に関する陰口は、とっくに聞き飽きている。
幼少の頃から言われ続けたのだ、今更何も感じない。

若干嫌そうな表情をした店員。
そんな顔ももう慣れっこだ。

肉まんを齧りながら外へと出る。
ホカホカで美味しい。

｢やっぱ旨いよな…はふっ…｣

食べ終わったゴミを捨て、行く宛もなくふよふよと浮かびながら進んでいく。

世間では派手でカッコいいヒーローが人気である。
子供の憧れとしても、大人の心の安寧を守る意味でも、ド派手な必殺技で敵を蹴散らす、そんな“カッコいいヒーロー”が、世間一般の理想像なのである。

その点、東矢はその理想とは真逆である。
滅多に変身しないし、代名詞とも呼べる必殺技も、ある分にはあるが使ったことがない。

やれ地味ヒーローだのヒーロー失格だの散々な言われようである。

｢…やっぱこういう質素で地味なもんがいいよなぁ…｣

しかし東矢は派手な物が苦手である。
派手の具現化とも呼べる珍妙なスーツはダサくて着たくないし、そもそも素のスペックだけで十分に怪人は倒せる。
だから東矢は変身しようとしないのだ。

ふとスマホに目を落としてみれば、倒壊した建物をバックに撮影された写真が投稿されており、多くの人々が熱狂的に彼を称えていたり、感謝したりしているコメントで埋め尽くされている。

｢…ウケばっか気にして、それ以外はどうでもいい…それがホントに“ヒーロー”なのかってんだ…｣

そっとスマホを仕舞い、ため息をつく。
つくづく理解できないと呆れつつ、帰っていく東矢だった。