東矢の戦い ページ9
指示されたエリアまで辿り着き、辺りを見回せば無惨にも破壊された建物の形跡が見られた。
即座に前世で培った魔力式生命探知を行うが、どうやら要救助人はいないらしい。
取り敢えず気がかりは一つ減ったところで、その気配が引っ掛かった一人の男の元へと直行する。
「ハッハー!破壊ってさサイコー!ヒャッハー!」
そんな世紀末のような叫びと共に、破壊音が響き渡る。
鉄球を打ち出す異能を持った怪人らしく、建物の上から鉄の塊を落として破壊活動を行っていた。
そして、ふとその目線が路地裏へと向けられる。
そこには逃げ遅れてガタガタと震える子供が残されていた。
「あ…あ…」
「おーっとこれは…いい感じのサンドバッグ発見…!」
完全に獲物を狙う獣の目をした怪人は、恐怖に怯える彼の頭上に大きな鉄球を生成しようとする。
「ハッハー!いいぜその顔!もっと俺に歪んだ顔を見せて…!? 」
唐突に止まった笑い声。
その一瞬前響いた銃声に、怪人の体が一瞬硬直した。
「いっ…!?」
「やらせるかよ」
そう言って二人の間に降り立ったのは、特徴的な銃を構えた眼鏡の男。
東矢であった。
「っ、ぐ…!お前…!ヒーロー気取りが…生意気な…!」
痛みと怒りに震える怪人が、その手に鉄球を生み出し東矢目掛けて投擲する。
…が。
「おっとっと…危ねぇな、俺じゃなかったら止めれなかったぞ」
「なっ…!?」
凄まじい筋力から放たれた鉄の豪速球は、いとも容易く東矢の眼前で勢いを失い宙に静止した。
その事象に驚愕する怪人目掛け、東矢は言葉をぶつける。
「お前の敗因を教えてやるよ。」
浮かび上がった鉄球が、高速で回転しだす。
「それは、たった一つの答えだ」
「なっ…なっ…!?」
己の武器を利用され動揺する彼目掛け、鉄球は投げられた時よりも疾く突撃した。
「お前は、力にかまけて破壊の快楽に溺れた。それだけだ」
「ぎぃやああああああっ!?」
断末魔と共にぶっ飛んだその体を即座に追い、専用の強化ロープで拘束する。
「…はい、こちらノーブルグリーン。怪人の確保に成功」
ヒーロー本部に連絡して、その身柄を受け渡す。
「あ、あのっ!」
そのまま去ろうとした東矢に、先程の少年が声をかけた。
「あ、ありがとうございました!」
「…別に。市民の皆さんを守るのが、俺たちヒーローって奴だからさ」
それだけ言い残し去っていく背中を、彼はただじっと見つめるのであった。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年3月8日 14時