プロローグA 東矢という男 ページ6
勇者は転生した。
その命を代償に、世界を救った英雄は今ここに新たな生を受けた。
小学生として学校に通い始めた東矢はすぐに勉強に打ち込み始めた。
前世では義務教育などという概念がなく、簡単な算数さえ満足に出来なかったあの頃とはもう違う。
幸いにも、東矢は転生しても地頭がよかった。
まるで乾いたスポンジが水を吸うように、怒涛の勢いで学問を履修していく東矢。
そのあまりの知性に気味悪がったのか、クラス内でのいじめが発生した。
有り余る才能への妬みから始まったそれは、いつしか保護者の間にも広がり出した。
しかし…
「草薙、何か色々と嫌な噂が先生の耳に大量に入ってくるんだけどどうなんだ?大丈夫か?」
草薙の担任が心配そうに東矢に問いかける。
既に中学生生活も後半戦に入っていた東矢へのいじめは水かけなんて日常茶飯事なほどエスカレートしていた。
しかし…
「あー…別に平気ですよ。俺が色々ヤバくて物理的にも浮いてるせいですし、普通に防げますから」
「いや、そういう問題じゃなくてだな…」
あっけらかんとした返しに困惑しか出来ない教師の心配と、保護者絡みのいじめを他所に、東矢はめきめきと力を付け続けた。
考査はほぼ満点、実技も優秀、学習態度よし、性格も特に難無し…強いて言うなら日常面での怠け癖が目につく程度。
何故か自主的に解除しているという体育の時以外物理的に浮いており、いじめを受けていることを除けば完璧な神童と呼ぶべき立派な生徒なのであった。
そんな彼の転機は高校二年生の時。
進路に悩む東矢が目にしたのは、目の前で何か明らかに凶悪な眼をした人のような何かが街中で人を襲っているところであった。
「っ、助けないと、だよな…!」
そう考えるよりも速く、東矢は宙に飛び出していた。
怪人を殴り付けて押さえつける。
「グ…コロス…!ウオオオオッ!」
どうやらその何かは人並外れた力を有しているようで、しかし理性を失っているようだった。
「くうっ…!」
仮にもまだ普通の高校生であった東矢には押さえ切れず、撥ね飛ばされてしまった。
地面に叩き付けられるのは浮遊で回避したが、非常にまずい展開だ。
迫る死の予感にぎゅっと目を瞑った、その時だった。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年3月8日 14時