東矢の戦う理由 ページ19
……ところで、と奏乃が話を切り出した。
｢草薙さんは何でヒーローになったんですか？｣
その問いに、東矢は暫しうんうん唸りつつ考えること五分。
遂に答えを出した。
｢……うん、まずはお前みたいな弱い立場の奴を一人でも多く救ってやるためで……｣
｢そうなんですね……ふふ、立派だなぁ｣
惚れ惚れしつつ褒める奏乃だが、ふと彼の含みのある言葉に気付き問い返す。
｢……他にもあるんですか？｣
｢あー……それと……俺の恩人への恩返し、か？｣
｢あー、助けてもらったヒーローさんへの？｣
｢いや、それもあるんだが……｣
しかし返ってきたのは一部否定の言葉。
そして、紡がれたのは。
｢……俺を色々叩き直してくれた師匠みたいな人、かな｣
｢へぇ、師匠ですか、草薙さんにもそんな人がいたんですね｣
｢あーいや、そうではあるんだが、ちょっと違うって言うかな……｣
｢へ？｣
やや飲み込めなかったのか、思わず問い返してしまう。
｢そうだな……｣
少し考えて、東矢は一つ問いを返した。
｢なぁ……奏乃｣
｢はい？｣
｢……お前は、転生……って信じるか？｣
｢……はっ……？｣
思わず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした奏乃だが、すぐに思い直したのか答える。
｢えーと……まぁ……信じたいですね｣
｢そうか……まぁ俺がそうなんだけどな｣
｢は？？？｣
予想外の返答に一瞬スペースキャット状態になってしまう。
｢俺さ、元々勇者として戦ってたんだ。魔王を倒して、世界に平和を取り戻す……よくあるファンタジー系のノリだな。｣
｢え……勇者……？魔王……？本とかの……？｣
｢……あー……情報量多かったか｣
申し訳なさそうにする東矢の眼前、やっと飲み込めたらしい奏乃が問い返す。
｢それで、師匠ってのは……先代の勇者とかですか？｣
｢いや、魔王だ｣
｢魔王｣
思わずオウム返しして思考が止まってしまう奏乃だった。
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ：http
作成日時：2023年3月8日 14時
