奏乃の戦う理由 ページ18
「……」
いつものようにスマホを見つめる奏乃。
しかしその表情からは確かな決意が感じられた。
「何見てんだ?」
「あっ、草薙さん……」
背後から声をかければ、一緒肩を振るわせた。
「どうした?」
「あー……えーと……」
「……俺には話せないことか?」
「……」
奏乃は暫く黙り込む。
暫し葛藤していたようだが、少しして口を開いた。
「……これです」
奏乃の見せたスマホの画面に映るのは、まだ幼い少女とその母親らしき女性。
少女の方はかなり見覚えがある。
「……小さい頃の奏乃、か」
「そうですね……」
「それで、こっちがお前の母親と……」
「はい……」
……なら、何故この写真を大事に見ていたのか。
その問いへの回答はすぐだった。
「……お母さんが、怪人に酷くやられたんです。元から重い病気だったのに、負傷も合わさって……お金が、必要になったんです」
奏乃の表情が歪み、わなわなと手を震えさせる。
「……そのために、魔法少女になった、と」
「はい……誰でもなれて、お金が稼げますから」
「そうか……」
「……」
見るからに奏乃の顔は曇っている。
そんな彼女を見て、東矢はいても立ってもいられなかった。
「……何万必要になるんだ?」
「ぇ……でも、草薙さんには関係が……」
「俺が大切な仲間の家族の一大事を聞いて、ただ黙っていられるような軽薄な人間に見えるか?」
「っ……いえ……」
「だろ」
真正面から奏乃を見つめる。
今まで見たこともない程本気の眼をしていた。
「……で、いくらだ」
「……あ.そ、その……お気持ちは嬉しいんですが……」
「いや、気持ちだけじゃないんだが……」
「そ、そうじゃなくてっ……!」
凄く申し訳なさそうに彼女がその値段を告げた。
「……さ……」
「三千万か?」
「いや、あの……さ、三億……円、です」
「……三億」
呆けた顔をしてオウム返しする東矢に、肯定の言葉を返す。
「……俺らの年収……二千万……」
「一人で15年……二人でも8.5年……」
「……スゥーッ……うん、ある程度は俺が出せる。何せ全財産で八千万あるからな」
「凄いんでしょうけど……どうしても霞みます……」
だが、東矢は本気だ。
その全財産を奏乃の母親の為だけに費やそうとしているのだ。
「だから俺にも協力させてくれ。見過ごせないんだ」
「あはは……草薙さんらしいですね……でも、断るなんて選択肢はないんですよね?」
「無いな」
「えぇ」
おどけて言った冗談も通じない程、東矢はただまっすぐなのだった。
「……わかりました。お願いしますね」
「おう!」
力強く返されたその返事が、奏乃にはやけに頼もしく思えた。
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:http
作成日時:2023年3月8日 14時