安息地 ページ25
…町を見回り続け、一つ分かったことがある。
魔物…少なくとも、ここに暮らす上位種であったりは、魔物同士での不毛な争いを好まない。
むしろお互いの長所と短所を理解しあった上で、それを補い合うように生活している。
下位種は理性がないものも多いから仕方ないとは言え、魔物同士が人間のように…いや、人間のように余計な対立をせずに共存し合っている事実は、やはり東矢にはよく理解できた。
｢…人間がいかに愚かか、よくわかっちまうな…｣
自嘲気味に笑う東矢。
自分は何のために戦っていたのか、やはりよくわからなくなってしまう。
それほどまでに、彼の根幹となっていた思想はとっくに瓦解してしまったのだから。
井の中の蛙、大海を知らずならぬ、国の中の人、魔物を知らず、世界を知らず。
自分たちが一番賢いのだと謳っておきながら、やっているのは環境破壊と無意味な争いと無差別侵略と大規模な虐殺と一方的な利用。
どれもこれも｢賢い｣とは到底言えない。
愚行としか言えないあまりに自分勝手で愚かで頭の悪い文明。
よくもまぁこんな頭で何千年もやってこれたものだと逆に称賛したくなってしまう。
…だが。
｢…人間界とは、まぁ当たり前だがちょっと違うよな｣
直接肥溜めに繋がっており、手作業で魔力席から水を流すトイレを見た東矢が苦笑する。
魔法を使わない技術、その一面においてだけは人間に軍配が上がる。
科学技術という面において、人類は他のどの種の追従をも許さぬ知識と技術を持ち合わせている。
魔物の持つ知識では、せいぜい作れて濾過器ほどだろうか。
魔法や人格、文明という面では魔物が勝るが、科学という一面においてのみ人間がそれを遥かに上回っている。
…やはり、魔族と人間の共存は出来ないものかと考えてしまう。
そんなものは理想論なのだろう。
きっと人間は一方的に魔物を忌み嫌うだろうし、異なる特徴を持ったものを排斥する人間には共生は難しい。
…それでも、願ってしまう。
この魔法技術とあの科学技術が合わされば、一体どんな摩訶不思議道具が生み出せるものか。
足りない力を補い合い、ぴったりと嚙み合わさった時、一体どんな逸材が生まれるのか。
それが、気になって仕方ない。
｢…馬鹿げてる、か｣
しかしそんなバカげたことを理想に掲げ、それを実現しようとしているのが今仕えている魔王らしい。
…その思いもわからんでもないと笑う東矢は、特に異常がないと判断して魔法陣に乗り、その町を後にする。
その目には、笑顔で手を振ってきた住民たちの顔が焼き付けられていた。
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クロロフィル＠リーフィア狂/あるりーす(プロフ) - 朱欄さん» ありがとうございます！これからも更新頑張りますね！ (2023年1月14日 20時) (
レス) id: c1253398fc (このIDを非表示/違反報告)
朱欄(プロフ) - Banana is Kami(作品最高です!キャラデザがすごく好きです!特にワイドちゃんがかわいい←あ、星押しときますn(() (2023年1月14日 20時) (レス) @page3 id: efb6a7397d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロロフィル@深緑の指揮者 | 作者ホームページ：http
作成日時：2022年12月29日 21時
