びいだま【オリジナル】 (ページ13)

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お母さんの言葉を聞いた次の日、私は親戚達がお酒を飲んで話している中、家を出ていった。少し、外の空気を感じたいと思った。

お母さんの言葉が頭から離れない。
あの後、よく分かんないけど涙が出て来たんだよね。止められないくらい。それくらい、お母さんのこと信じてたんだと思うし、だからこそ、凄くショックだったんだと思う。
今後、お母さんにどう接すればいいのかな…
お母さん、私のこといらないんだよね…
そう思うたびに、涙が出て来た。

気がつけば、ある海岸に来ていた。
12月の海岸はとても寒かった。
ここは、昔家族で行った場所だ。お父さんとお母さんと私で来て。3人で写真も撮って。私、小1だったから、波が怖いって泣いて…。でもお父さんもお母さんも、大丈夫だよって笑ってた。
私の唯一の3人でのいい思い出。
あれから数ヶ月後、お父さんはこの海岸で自ら命を絶った。
波が怖いのは、今でも同じだ。
お父さん、何で死んじゃったんだろ…
あんなに優しくて、素敵なお父さん。
もしお父さんだったら、何て言うのかな？いらないって言うのかな、私のこと。

1人で泣いていた。
膝を抱えて。
そこに、手が差し伸べられた。
しわくちゃの手。でも、あったそうな手。
そこには、1人のおじいさんがいた。

「寒いだろ？」

「…はい。」

「どうした？お母さんは？」

「お母さんは、私を産まなきゃ良かったって。」

「そうか…。」

「私が、すぐかんしゃく起こすから、お母さん、疲れたって。」

「何歳？」

「11歳。」

「よく来たな。辛いだろう。君は強い。」

「強くないよ。すぐ泣くし。」

「そうじゃない。泣いていいんだよ。泣かないことが強いことじゃない。苦しくても生きてる君が強いんだよ。」

「…。」

「泣いていいんだよ。その涙が君を守るよ。泣いて忘れろ。」

私は嗚咽を漏らして泣いた。
このおじいさんは、凄い人だ。

「お守りだ。これ。」

「え？」

「わしからの、お守りだ。」

小さな巾着。
中に何かあるみたい。少し膨らんでいる。

「くれるの？」

「うん。あ、そのお守りを持っているのは君ともう1人の男の子だけだ。出会えたらいいな。中身は出会えた時に開けるんだぞ。」

「うん、ありがとう。」

「負けるなよ。」

あの時のおじいさんの笑顔を、私は忘れない。