警視庁は知っている

方針 ページ16

上杉side

機械的なドアの閉まる音。急に響いたこの音に絶望を味わった。否、閉まることは分かっていたのだ。彼女はドアの近くに立って、ノブに手を回しながら話していたのだから。
でも、誰も止める者はいなかった。と、言うか、頭がついてきてくれないのだ。

折角話していたことも頭で文が成り立って言ってる意味は理解しても、"理解したくない"という意思が強まって、やがて勝ってしまった。
皆も理由は違うかもしれないけど、様子からだと自分達を責めている事は分かった。

皆の沈黙を、破ろうと一番最初に口火をきったのは若武だった。

「どうするよ。」

と、全体に聞く。うつむいていた者も、顔を上げて若武に目を向ける。

「アーヤが本当は退団したくなかったのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。もしくは、あれは本当の話だったのかもしれない。

でも、どっちにしてもアーヤのことは考えないと駄目だろ？」

と、ぐるりとメンバーの顔を見回すと、そう告げた。それは正論だし、考えてみた。
でも、思いつかない。というよりは"思いつけない"。考えようとすると、さっきの言葉と音がフラッシュバックしてわざわざ再確認させるのだ。
そんな非理論的な自分に苛立ち、焦る。
そんなことをしていると、不意に黒木が手を挙げ、発言の許可を求めた。

「こういうのはどう？今のアーヤの状態は不安定だ。だから本人に変な探りをいれると危ない。
だからまわりから調べていって、俺達が、知るべき訳ではないと判断したら調査を途中で断念。」

すると若武が、パチンっ、と、指を鳴らして

「それでいこう。賛成の者、挙手っ！」

すると全員の手が挙がって、満場一致でそれに決まった。

「じゃあ、黒木と上杉は聞き込み、七鬼は浜田で聞き込み、小塚は待機だ。では、健闘を祈るっ！

解散！」

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