あんスタ短編 (ページ35)

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Xmas.kaoru② ページ35

心なしか元気の無い声にぎゅっと腕に力が入っているのに痛くない様に加減してくれている。

「ただいまー、薫？」

『…うん？』

薫の手に手を重ね、胸の前でぎゅっと抱きしめた

「フィーチャーライブおめでとう」

『…うん』

「クリスマスライブも楽しみだね？」

『うん』

「25日、ライブ以外予定組んでないんだけど、気づいてる？」

『うん？』

私だってクリスマス、薫と一緒に居たいよ？
そりゃ薫は私の彼氏だもん。
それに、ライブだってファンの子がたくさん一緒に祝いたくて足を運んでくれる。ファンは何も男性だけじゃない
(私がどんな気持ちでその裏側にいるか考えたことある？)

お仕事なんだから私情なんて挟まないし、妬いてられない

でも、だったら！空いた時間は一緒に過ごしたいって思ったっていいじゃん。

「…ライブを勝ち取ったのは私だけど……楽しみにしてたのは、薫だけじゃない」

不意を着いて体を反転させると頬に両手を添え唇を奪った

『っ！』

(あー…情けない。こんな表情見られたくないっ)
首筋を通り越し、背伸びをして肩に顔を埋め、ぎゅっと抱きついた

「…ごめん、部屋戻ってもう寝るね？」

頑張っていつもの表情に戻すと、呆気に取られた薫を置いて扉を閉めた。

「はぁ…午前中、どうしよう。モチベあげつつプレゼントも考えなきゃ…」

さすがに今の今で切り替えられるほど出来た頭は持ってないから、明日から考えよう

シャワーを浴び、布団に入った所で扉がコンコンと音を立てた。

「はい？」

返事を聞くと、遠慮がちに開かれた扉から、薫が顔を覗かせていた

「どうしたの？」

体を起こすと、扉を閉め、ベッドサイドに寄ってきた

『Aちゃん、ごめん。明日から頑張るからさ、今日だけ、その…甘えても良いかな？』

相変わらずしゅんとした顔で立っていて、相当ダメージを受けたみたいに見えた

「ん。分かった。寒いから早く入って？」

今はアイドルとマネージャーではない。
恋人として、薫に頼られた気がした

『うん、ありがとう』

背中側から大きな体に包まれて暖かい。

「じゃあ寝るよ？おやすみ、薫」

『うん、おやすみ』

電気を消すと、薫の匂いと体温に安心して夢の中へと落ちていった

ー
それからというものの、あの日の薫はもうどこにもいなかった

いつも通り、それ以上の仕事を、こなし、ライブのことに関しても前向きに意見を出すまでに変わっていた

『うん♪それでお願いします。ありがとうございます。』

圧巻だ