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9話 ページ10

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先程まで歩いていた賑やかな街の喧騒を抜けて、辿り着いたのは人気のない河原であった。……此処は、太宰さんと私が出逢った場所だ。


「此処が、貴女と太宰くんが出逢った場所ですか」


懐かしい。
あの時のことを思い返すと、つい頬が緩んでしまう。

初めて太宰さんと出逢ったあの日は、本当に最悪だった。あの時は、真逆あの人が放っておけば直ぐ川に飛び込むような人とは思っていなかったのだ。


「ねえ君、森さんから頼まれて僕を止めに来たんでしょ」

『は、はい』

「ふうん」


興味無さげに相槌を打った彼は、徐に其の場にしゃがみ込んだ。


『あ、あの、』

「君も一緒に飛び込んでみる?きっと楽しいよ」


私を見上げる彼の瞳には何の感情も宿っていないみたいで、其れが何故か凄く切なく感ぜられて、思わず言葉を詰まらせる。


『……何故、こんなことを』


やっとのことで絞り出した言葉は、最後まで云うことは許されなかった。


「理由なんか無いよ。唯だ、そうしたかっただけ。抑々こんな世界に生きているのなんて何の意味も無いんだよ。君もそう思わない?」

『……お、思いません』

「へえ、其れは如何して?」


無邪気な瞳だった。目に映るもの全てに対して興味を持って、疑問を抱いて、大人からの答えを知りたがる、少年のような目。私は彼のそんな目を何度か見たことがある。


『……理由なんか無いです。唯だ、そうしたかっただけなので』


数秒前の彼の台詞をそっくり其の儘返すと、彼は一瞬目を丸くして、それから可笑しそうに笑った。


「あっははは、そうかあ。そうなんだあ。……ふふ、面白いね君は。気に入ったよ。僕を止める役を君に任せた森さんに感謝しなきゃね」

『…………』

「ほら、おいで?もっと奥に行こう。綺麗なものが沢山あるよ。きっと気に入る。……そうだ、名前教えてよ。僕は太宰治。好きなように呼んでね」

『私は____』


今でも忘れない。此の場所で、太宰さんは初めて私の名を呼んでくれたのだ。ずっと探していた宝物を見つけたような、そんな顔をして。


「……如何しましたか?」

『あ!いえ…一寸……思い出してて』

「太宰くんとのこと、ですか」

『……はい』


ドストエフスキーさんは私の隣に腰を下ろすと、穏やかな笑みを浮かべながら空を見上げた。澄み渡った綺麗な青い空。雲がゆっくりと流れていく。


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設定タグ:文豪ストレイドッグス , ドストエフスキー , 太宰治   
作品ジャンル:恋愛
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めろん(プロフ) - 砂糖やよいさん» 嬉しいお言葉を沢山ありがとうございます;;滅茶苦茶頑張れそうです!思うがままに書いていくと思いますが良ければあたたかく見守ってやってください…! (2023年3月28日 1時) (レス) id: 0291e6dbfe (このIDを非表示/違反報告)
砂糖やよい(プロフ) - すごく素敵です!!!!語彙の豊富さと比喩表現がグサグサ儚くて胸にきました!ドスくんの恋愛観などめちゃめちゃに気になります。更新頑張ってください! (2023年3月27日 1時) (レス) @page6 id: 3762c357ba (このIDを非表示/違反報告)
めろん(プロフ) - Azuki☆さん» 嬉しいコメントありがとうございます!頑張ります🔥 (2023年3月27日 1時) (レス) id: 0291e6dbfe (このIDを非表示/違反報告)
Azuki☆(プロフ) - 続き楽しみにしてます…!更新頑張ってください! (2023年3月26日 21時) (レス) @page4 id: b75300cb40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:めろん | 作成日時:2023年3月26日 17時

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