重力遣いの新相棒【文豪ストレイドッグス】

信頼 ページ21

〜中也side〜



俺はグラスを傾けてAが持ってきたワインを飲む。



「お、うまいじゃねえか」


「でっしょー？」


こいつは得意げな顔で笑う。



「まあ今日はお前もたくさん飲め。今日の仕事はほとんどお前の功績だからな」


「うん、中也なにもしなかったもんね。職務怠慢だー、私にいっつもガミガミ言うくせにぃ」


「うるっせえ！！」


「あはは、でも中也はいつも頑張ってるから、今回は特別に許してあげよう。ああ私って心が広い！！」


「なんでお前に許されなきゃいけねえンだよ…でもまあいい。明日はお前相手に暴れたい放題だからな」


「こわっ！！中也、笑顔が黒いよ！私まだ死にたくないんだけど！！」


「はっ、お前が訓練ごときで死ぬワケねえだろーが」


「でも私、まだ中也に一度も勝ったことないもん！」


「確かに体術だけなら俺の方が上かも知れねえが、異能も使ったらどっちが勝つか分からねえだろ。それにお前は十分強い」


「うぅ…でも明日こそは絶対勝つ！！」


「そうか、せいぜい頑張れよ、まあ俺は負ける気がしねえが」


「ふーんだ、明日鼻水たらして泣いたって知らないからね！！」


「だれが泣くか！！」




はあ…

こいつといると、本当に疲れる。

だが、なぜか落ち着くのもまた事実だ。



矛盾している、と自分でも思う。

なぜこいつといると居心地がいいのか、と考えたことは何度もあるが、明確な答えは見つからなかった。


…でも、答えなんていらなかったのかも知れねえな。

最近ではそう思っている。

居心地が良いなら、それでいい。

Aにこんなこと言ったら、単細胞だと言われそうだ。


Aがバカなことをしでかしたら怒鳴ったり、書類が嫌だからと言って逃げるのを捕まえたり、そういった日常が、俺は案外気に入っている。




…まあこんな日常がいつまでも続くといいけどな。





「そういえばさー、芥川が仕切ってる人虎探しってどうなってるんだろう？」


「さあな、まあ芥川なら大丈夫だろう」


「うん、そだねー」






その後俺たちは、とりとめもない話をしばらくしていた。

そして気付いたら、もう日付が変わっていた。



「あ、もう１時じゃん。中也、お風呂借りるねー」


「へいへい」



本当は、自分の部屋に帰れ、と言いたいところだが、これもいつものことだ。

まあこいつがそれなりに俺を信頼してくれてる、ということにしておこう。


そう結論づけて、俺はもう一度酒を飲み直すのだった。

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