この巫戯けた素晴らしき世界は誰が為に在る？【文豪ストレイドッグス】 (ページ10)

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『『うつくし姫』──それが私。

数多の人々を死に導いて、挙げ句の果てにこうしてのうのうと生きている『鬼』も私。

独りぼっちなんて銘打ってはいるけれど、そんなものじゃあない。

私は、誰かと共に歩む事を赦されない。

数多の命を、人生を、幸福を奪ってきた私が幸せに生きていくなんて、赦されるはずがない。

マフィアに入ったのは、なにか見付ける事ができるかも知れないと思ったから。

私が誰かを救えるような“何か”が、あるかもしれないと思ったから。

正義なんて綺麗事よりも、悪なんてはっきりとしたもののほうが合っていると思ったから。

暴力や死、闘争──そう云う人間の剥き出しに近い場所にいれば、なにか、生きる理由が見つかると思ったから。

赦されない私だけど、赦せない自分だけれど、

それでも──『私』を好きになれるかもと、そんな馬鹿を願ったから』

きつく閉じた唇が小さく震えていた。

誰も何も云わなかった。

唯一、鴎外だけが、口を開けた。

鴎外「──ならば君は...今迄ずっと...──」

しかし其れは言葉に為らない。

『私は臥煙A。
無知にして無感にして無生の吸血鬼。

齢は500と20。生まれた場所は覚えていない。

それでも、私を此処に置いておくか──よく考えて下さいね』

そうして、Aは此処に来て初めて、一番感情のこもった笑みを向けた。

その感情は、自虐か諦めか、或いは疲労だった。