玖 ページ11
──Aside──
夜中だと云うのにあちこちに点っている灯りが煩わしい。すれ違う人々の幸せそうな笑顔も、楽しそうな街の雰囲気も、全てが目障りで心地悪い。
何時もの事だった。
吸血鬼──中二病らしい響きではあるが、それは怪異の王とも呼ばれる存在でもある。
その存在が世に知れ渡っていないのは、吸血鬼のほとんどが
吸血鬼は完全な不死という訳じゃない。太陽、十字架、聖水など弱点はある。
如何に強い吸血鬼といえど、太陽の光を長時間浴び続ければ、体は灰になる。つまりは死ぬ。
そして吸血鬼の死亡原因は、そのほとんどが“退屈”。
『退屈は人を殺す』──のだ。
けれどそれすら、私には許されない。
強い者の宿命とでも云うべきなのだろうか。笑えるね。
賑やかな大通りとは相反して、薄暗く沈黙に包まれた路地裏に座り込む。
此処が一番落ち着く。
誰の目も気にする必要がないから。
君には孤独が似合う。
そんな事を私に云ったのは、誰だったか。
「こんな処で何をしているんだい、御嬢さん」
煩いな。こんなところまで、なんで態々。
「此方においで。幾ら春先とは云え、風邪を引いてしまう」
『良いです、大丈夫ですから』
「臥煙Aさんだろう?」
顔を上げ、初めてちゃんと男を見た。
黒い篷髪。砂色の外套。色白の肌に、黒い瞳。
『元ポートマフィア幹部の太宰さん、...だったかな』
太宰「...流石ですね」
『知っているからなのかも知れないけれど、さん付けと敬語は止めて。鬱陶しい』
太宰「それじゃあ、そうさせて貰うよ」
それに資料を読んだだけなのだから、流石と云われても困る。
太宰「一杯どうだい?丁度相手を捜していたのだよ」
『誰でも良い癖に。構わないけど、ワインがある処が良い』
太宰「嗚呼、それならお薦めの店がある」
差し出された手を取って、立ち上がった。
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作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2018年3月12日 1時