この巫戯けた素晴らしき世界は誰が為に在る？【文豪ストレイドッグス】 (ページ22)

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弐拾ページ22

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『がっ──...』

水面で強く背中を打った為に全身が痺れ、上手く呼吸が出来なく為った。其れも直ぐに収まり急いで海から飛び出るが、時既に遅し。

『──』

今度は言葉を発する暇すら無かった。

先程は寸前で体を捻る事が出来たが其れも叶わず、再び見えない圧力( 、、、、、、)が胸に直撃した。

肺から空気が押し出され、骨が軋む音がした。

「予感は的中したなァ...漸くだ。漸くお前を、此の手で葬る事が出来る！」

『ぅ...──っ！！』

体が回復したと思えば又攻撃を喰らった。今度は連続だ。上から、下から、横から、斜めから。

妃薫の力を知っているからこそ、苦しめたいが為に態と間を開けての攻撃だった。

中原「妃薫！！」

駆け付けた中原が重力で男を殴り飛ばした。

『っ、中也』

中原「大丈夫か？無理すんな、話は首領から聴いたからよ」

『はァ...ご免。終わったらお酒奢る』

中原「おう」

「ふはは...余裕だね、殺人鬼」

妃薫が攻撃に出た。

拳を男の鳩尾へと的確に振り下ろせば、地面に亀裂が入った。仰向けに倒れ乍らも笑う男を見て妃薫は云った。

『何故私だけを狙わなかったの。一般人は関係無いでしょう』

「関係無いィ？良く云うよ、殺人鬼。何千人がお前のせいで死んだと思っているんだ」

『...其れは』

「嗚呼、昔と変わって居ないんだなァ。父が云っていたよ。殺人鬼は自分の強さを過信して居るから油断ばかりで、案外殺すのは容易いだろうとね」

突如、妃薫の体を水が包んだ。其の侭押し流される様にして壁に打ち付けられた。水は体を包んだ侭で呼吸が出来ず、妃薫はもがいた。

中原「ぉらあっ！！」

中原は重力を纏い男に殴り掛かった。すると目の前に土壁が現れ、男には掠り傷一つ付かなかった。

然し其れを予測して居た中原は重力を掛けた左手で土壁を破壊し、回し蹴りを男のこめかみに打ち込んだ。男の体が吹っ飛ぶ。其れを水が受け止める。

其の間に水から脱出していた妃薫は、男の右手首を捻り上げた。其処に中原が拳と蹴りを連続で入れる。

常人ならば此の時点で絶命する。然し、男は依然飄々とした表情で風を遣い二人を退けた。

「あははははは！あははははは！」

狂った様に笑い始めた男を見て中原は顔を顰めた。妃薫は何かを思考し男に飛び掛かった。

「死んでくれ」

男が右手を妃薫に向け、────。