壱拾玖 ページ21
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鴎外「寄りにも寄って探偵社に頼るとは...」
森は苦笑し頭を抱えた。
目の前では妃薫とエリスが仲睦まじく遊んで居る。
あの後、妃薫は正式に武装探偵社に依頼をした。内容は『伊邪那弥の調査』である。マフィアと云う事を明かした時は皆一斉に戦闘態勢を取ったが、太宰のフォローもあり、無事引き受けて呉れた。
そして冒頭に戻る。
『黙って行ったのは謝ります。けれど、人手は多い方が良いですから』
鴎外「やれやれ。君がマフィアに入ってからと云うもの、以前より組織が賑やかに為った様な気がするよ」
『其れを望んだのは貴方方でしょう?』
鴎外「其れはそうなのだけれどねぇ」
困り顔の森を見て笑う妃薫。だが内心ではかなり焦っていた。
伊邪那弥が日本へ来て自分の居場所を掴めば、恐らく此のヨコハマごと海の底へと沈めて仕舞う。
比喩では無い、実際にそうした人間が嘗て彼の一族に居たのだ。
対策を練らないと危険だ。そう思い執務室を出ようと、妃薫は立ち上がった。
刹那。
空が閃光を放った。
『っ』
途端に、空気が破裂するかの様な轟音が街に響いた。
『
閃光と轟音の正体は雷鳴だった。
馬鹿な。今の今まで空は雲一つ無い快晴であった筈。其れなのに、何故。
考えるより早く体が動いた。
鴎外「現在動ける幹部から遊撃隊迄の人間を集めろ。今直ぐにだ」
森は背後に控えていた部下に告げた。
其の時、
妃薫は既に、窓の外。
空は黒く分厚い雲に覆われ、此の短時間では絶対に有り得ない程の土砂降りに為って居た。
太宰に
携帯を仕舞い一旦脚を止めた其の時、妃薫は目を見開いた。
空に人間が浮いて居た。
何かに支えられている訳でも無いのに体は微動だにせず、其の男は無感情な瞳で街を見下ろしていた。
妃薫は長年積んで来た経験と直感と本能で、其の男を蹴った。
吸血鬼の力で強化した蹴りである。木っ端微塵に為ろうと何ら不思議は無い。其の筈だったのだが。
「
男は口角を挙げ、舐める様に妃薫を見た。
背筋が冷える感覚がした。頭の奥が冷たく為った。
迫り来る
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作者名:妃薫。 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakaharaty1/
作成日時:2018年3月12日 1時