06.賭博場 ページ6
ボールは友達と言った少年がいるが、丁半賭博で育った私の友達は専らサイコロだけだった
おかげでツボの中で響く音でサイコロの目がわかるようになり、ずっとツボ振りを任せられている
｢ハイ、ツボをかぶります｣
この音は丁だな
「半!!」
…またか
最近出入りしているこの織部とか言う客は当てたためしがない
織部が賭けたコマ札は減っていく一方である
どれほど運に見放されているのか？
織部の煙管から出た煙は、札束に羽が生えた形となって消えていく
「なかなか当たらんのぉ〜」と嘆きながらも織部は笑っていた
客に興味を持った事は一度もなかったが、その笑顔が頭から離れなかった
他の客の賭けや儲けの事など考える余裕はなく、私は織部に目を奪われてしまう
織部は賭ける前は眉間に皺を寄せて真剣に悩んでいる
首を傾げ、時々うつむくその険しい表情は渋くかっこいい
丁半が定まった時の表情は屈託のない笑顔で可愛らしい
負けた時の反応は潔く、お金を賭けている賭博だと言う事を忘れてしまうぐらいだ
｢ハイ、ツボをかぶります｣
1回ぐらい勝たせてあげたいな
「半がそろいました」
…しまった…
一気に静まりかえる賭博場の空気
ツボ振りが目をバラすなど前代未聞である
でも、これで織部が勝った時の反応を見ることが出来る
きっと今まで見たことのない笑顔ではしゃいでくれるのだろう
「丁!!」
「…は？」
織部の一声に皆の動きが静止する
他に賭ける客はおらず、ツボを開ければ半で、とりあえず織部の一人負けである
今の失態で下げられた私は、店の外で夜風に当たって頭を冷やす
しばらくするとコマ札を全て取り上げられた織部が出てきた
「なんで目を教えたのに外したの？」
「俺は人の意見に左右されたくないんだよ。
自分が悩みに悩んで決めた事じゃから、結果がどうであれ後悔はないし。
それに、勝てるとわかっている方に賭けても面白くないだろ？」
丁に賭けた時は、こいつは馬鹿だと思った
賭博の中に自分の生き様を語った奴など初めて見た
「負けっぱなしでも面白いの？」
「真剣な志野の姿が見えればそれで幸せなんじゃよ」
火が出たんじゃないかと思うくらい、一気に顔が熱くなる
賭博に負けたくせに、まるで勝ち誇ったかのように笑う織部
悔しいし、恥ずかしいけどすっごく可愛い
「…金欠のくせに」
「志野に会えるなら安いもんよ」
煙管の煙はハートの形となり、夜空に消えていく
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梼(プロフ) - 13日の金曜日さん» あっ。正解w元は鬼灯で書いてたものを引用して名前変えだけですからw (2015年7月28日 19時) (
レス) id: 50aca512b0 (このIDを非表示/違反報告)
13日の金曜日 - 白澤とか唐瓜とか出てきて鬼灯○冷徹かと思った自分を殴ってやりたくなる、今日この頃 (2015年7月28日 14時) (レス) id: e33d5cb0ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鋳 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/toshi6411/
作成日時：2015年5月9日 5時
