出会い ページ3
両親が亡くした。
最愛の二人を。
僕がなんの恩返しをすることもなく、
二人はこの世を去った。
二度と手の届かぬところへ
……逝ってしまった。
なんて親不孝な奴なんだろう。
最初はそう自分を嘲笑していた。
でも、父上が遺してくれた居場所に向かう途中、
抑えていた感情が溢れるかのように、
涙が頬を滑る。
熱く滲む視界の中、
父上や母上にせめてもの親孝行をと、
必死に道を進む。
それでも嗚咽が止まらなくて、
悲しみが僕を囲んで、固まって、離れてくれなくて。
その場にうずくまってしまった。
声を荒げて泣く。
涙と一緒に思い出が出ていくような気がして、
怖くて。
泣いたら母上や父上が帰ってきてくれる気がして、期待して。
寂しいなあ。
この涙が母上と父上になってくれないかなぁ。
まあ、ありえないだけど。
悲しいなあ。
いつも泣いていたら、母上が抱きしめてくれたっけ。
父上は頭を撫でてくれたっけ。
そっかぁ。もういないのかぁ。
………会いたいなあ。
「うっ……ヒック………父上……は、はう……」
どのくらい泣いていたんだろう。
「どうしたの?」
舌ったらずな口調で発せられたその声は、
鈴を転がしたような可愛らしいものだった。
顔をふっとあげると、歳は10〜14だろうか。
長い栗色の髪を揺らす女の子がいた。
涙はすっかり止まって、なんとも言えない感覚が襲う。
しかし、心の喪失感は消えない。
「う…………ぁ。」
情けないことに、こんなことしか言えなかった。
けれど、その小さな手で背中をさすりながら、
「大丈夫、大丈夫。」
と紡ぐものだから。
僕は、自分より幼い彼女に重すぎる話をした。
彼女は、少し驚いたあと、
「……私も、警察学校行くんだよ。
同じ理由で。」
だから頑張ろ!と、僕の手を引いて立ち上がる。
その後も、彼女は僕を慰め続けた。
同じ境遇の者として、その言葉には、温かみと同時に、重みがあった。
寂しさと言う塊が溶けていく気がした。
再び動き出した心に、鼓動が早まる。
「行きましょう!
よろしくお願いします!」
齢、14である。
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操咲作乃 - 分かりました!楽しみに待っています。 (2020年5月17日 10時) (レス) id: 57a619e46a (このIDを非表示/違反報告)
鏡の国のアリス(プロフ) - 操咲作乃さん» 有難うございます〜!!では採用させていただきます!更新、しばしおまちを〜!!! (2020年5月17日 0時) (レス) id: 958bbe9c3e (このIDを非表示/違反報告)
操咲作乃 - 勿論です!喜んで戴けて凄く嬉しいです! (2020年5月16日 6時) (レス) id: 57a619e46a (このIDを非表示/違反報告)
鏡の国のアリス(プロフ) - 操咲作乃さん» 遅れてしまい申し訳ございません!ひぇえ、そうなんですか?!土地神様です、あの神社をお守りするお狐様です〜!素敵なお名前をありがとうございます!採用してもよろしいでしょうか…? (2020年5月16日 0時) (レス) id: 958bbe9c3e (このIDを非表示/違反報告)
操咲作乃 - 初めまして。狐の名前募集中と聞きまして。瑞祇(みずき)とかどうでしょう?「瑞」にはめでたい印等の意味があり、「祇」には土地神等の意味があります。あ、でもめでたい存在じゃねえよこの野郎とか土地神じゃねえよこの野郎とか思われたのならば忘れて下さい。 (2020年5月14日 8時) (レス) id: 57a619e46a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鏡の国のアリス | 作成日時:2019年10月27日 12時